第963話 姉と娘と母
着替えの為にベルフラウ達三人は神官に連れられて別室に案内される。
「この部屋は客間となっておりまして、今は誰も使っていないので着替えに丁度良いかと思います」
「ありがとうございます、神官さん」
「いえ、それではこの鍵をお使いください。万一でもそのような事はないと思いますが、着替えの最中に誰か入ってこないように扉には鍵をかけておいた方が良いと思いますので。……それでは私はこれで」
神官さんはそうベルフラウ達に告げて一礼した後に戻っていった。
神官の背を見送った後、ベルフラウは神官に渡された鍵を使って部屋を施錠を外しカレンとリーサと共に部屋に入る。ベルフラウは部屋の灯りのランプを付けて、最後に部屋に入ったリーサが内側から施錠して万一に備える。
「じゃあベルフラウさん、ひとまず服を脱いでくださる?」
「うん、ありがとうねカレンさん。正直服が濡れてたから着替えたかったのよ。レイくんに目線を送って助けを求めてたのに、何故かレイくん私から視線逸らしちゃうし……」
「それ多分、濡れたベルフラウさんを見れなかったんだと思いますよ?」
「そうなの?」
カレンの指摘にベルフラウはキョトンとした顔を浮かべる。
そんなベルフラウにリーサは微笑ましそうな表情を浮かべて言った。
「うふふ、ベルフラウ様は誰もが羨むほどの美貌の持ち主でございますから。そんなベルフラウ様の水に濡れた扇情的な姿を見せられては、いくら紳士的なレイ様であっても目のやり場に困ってしまうのでございましょう。レイ様を視線を向けないように努めて努力されていましたよ」
「あ、そういう理由だったんだ……。てっきりまたレイくんに雑に扱われてるのかと……ありがとう、リーサさん」
ベルフラウは頬を少し赤らめながらリーサにお礼を言いながら着替えを始めて服を脱ぎ始める。
「レイ君は別にベルフラウさんの事を雑に扱った事はないと思いますけどね……あ、濡れた服をお預かりしますね」
カレンはそう言いながらベルフラウから濡れた服を預かって紙袋に仕舞う。そうしている間にベルフラウは身に付けていた衣装を全て外し、残りは下着だけとなった。
「うわ……下着もびちゃびちゃ……」
「あらら困りました……ドレスは用意してございますが……カレンお嬢様、どうなさいます?」
「そうねぇ……どうしようかしら」
「気にしないで。こうなったら別に下着無しでもドレスは着れるし」
ベルフラウはそう言いながら下着を脱ぎ捨てて裸になる。
「わあ!ベルフラウさん、ストップ!ストップです!」
カレンは慌ててそう言いながらベルフラウから目を逸らす。
「え、なんで止めるの?」
「いくら同性とはいえ女性が人前にみだりに裸を晒すのはちょっと良くないですって。仕方ないわ。リーサ、私の下着を貸してあげて」
「畏まりました」
リーサはそう言いながらカレンの鞄から下着を取り出してベルフラウに渡す。
「どうぞ、ベルフラウ様」
「これ新品じゃないですか。別に私は下着を付けなくても……」
「下着を付けずにレイ君の前に立つのは破廉恥です。彼の情操教育に悪いですし」
「むー」
「それにカレンお嬢様の身に着ける下着は毎回新品でございますが」
「え?」
「え?」
ベルフラウに不思議そうな顔を向けられたカレンもまた不思議そうな表情で首を傾げる。
「下着は毎回新品?」
「え、はい。ベルウラウさんは違うんですか?」
「……」
こんなところで貴族のお嬢様と自分の生活レベルの差を思い知らされてベルフラウは押し黙ってしまう。そして全裸で立っているのも馬鹿らしくなったので大人しく渡された下着を身に付ける事にした……のだが。
「……勝った」
「ベルフラウさん、人のブラを身に付けてガッツポーズするのは止めてください」
カレンのブラを装着したベルフラウは、少し勝ち誇った顔をしていた。
「ふむ……カレンお嬢様は92ですがベルフラウ様は95といったところでしょうか」
「「!?」」
見ただけでサイズを察したリーサに驚愕する二人だった。
「うふふ♪」
「ま、まぁリーサの言葉が事実かは置いといて。ドレスをちゃちゃっと着ちゃいましょうか」
カレンは話を逸らすようにそう提案する。
「そ、そうね……じゃあ二人とも、お願いしますね」
「はい、お任せください」
そして二人はリーサに手伝ってもらいながらドレスを身に纏い始めるのだった。
◆◇◆
――ミリク神殿内部、最奥の間前――
それから少しして姉さん達が部屋に戻ってきた。
「お待たせレイくん」
姉さんはそう言って僕に笑顔を向ける。
衣装チェンジした姉さんは、白を基調として青いラインの入ったドレスを身に纏っていた。カレンさんのドレスなだけあって色合いがカレンさんチックだが姉さんが身に付けても十分似合っている。
「うん、似合ってるよ姉さん」
「えへへ、ありがとう」
僕が素直に感想を言うと姉さんは照れた様子で笑う。そしてそのタイミングで最奥の間の扉が開かれ、先程の神官の男性がこちらに歩いてくる。
「皆様、お待たせいたしました。準備が整いましたのでお入りください」
神官の男性は僕達にそう告げると、男性は扉の前から脇に移動して僕達に道を譲る。
「奥にお進みください。レベッカ様の母君と父君が皆様をお待ちです」
そして神官の男性は一礼した後、廊下の奥へと去っていった。
「では参りましょう。わたくしも久しぶりに母上と父上と会うのが楽しみにしておりました」
レベッカは嬉しそうに笑い、僕の手を軽く引いて歩き出す。
そんな彼女の様子に和みながら、僕はレベッカの両親と顔合わせするという緊張を少しだけ覚えつつ、レベッカに手を引かれながら最奥の間へと足を踏み入れるのだった。
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