第836.5話 不意打ち
一方、その頃――
ベルフラウ達はレイ達を探すために行動を開始していた。
「それで、サクライ達の場所は何処なの?」
「ちょっと待ってください……今、ミリク様にお伺いを立ててます」
ルナの質問にレベッカが答えると、彼女は目を閉じて静かに祈り始める。そして数秒後に目を開いて言った。
「……どうやら、レイ様達は南南西の方角に向かっておられたようですが……どうやら、現在何者かと交戦の最中のようでございます」
「何者か……? 魔物かしら……?」
「おそらく……ですが、この魔物……以前に何処かで……」
レベッカはそう呟いて思案する。
「レベッカちゃん、知ってる魔物なの?」
不安に感じたベルフラウがレベッカにそう尋ねる。
「……以前と姿が変わっていて魔力も跳ね上がっていて姿も少し変わっておりますが、それに近い雰囲気を感じます。ですが、あの魔物は以前にレイ様が打ち倒したはず……」
「……まさか、あの……名前を思い出せないけど、あの魔軍将よね?」
「ええ、わたくしもド忘れてしておりますが、あの魔軍将でございます」
「(どれだけ影が薄い敵だったのかしら……)」
カレンとレベッカの会話を聞いていたノルンは疑問に思うが、それを口に出すのは止めた。
「幸い、ここからそう遠くない場所で交戦しているようでございます。皆様、急いで向かいましょう」
「そうね。レイくんがあんな奴に今更負けるとは思えないけど、急がないとね」
そう言ってカレンは駆け出した。ルナとベルフラウもそれに続くように走り出す。
「あ、ちょ……早いわよ! ………?」
遅れて走り出したノルンだったが、ふと背中に視線を感じた。何だろうと思い後ろを振り向くと、十メートルほど離れた所で悪魔の翼が生えた少女の姿があった。
「……貴女は?」
見たことのない少女だった。疑問に思ったノルンはその少女にそう質問する。
「……」
だが、その少女はノルンの質問に答えずに左腕をこちらの方角に伸ばして指先をクイッと曲げる。すると、少女の指先から黒い炎のようなものが飛び出し、ノルンのすぐ横を通過していった。
そして少し遅れて、ノルンの後ろで何か柔らかいものがドサッと倒れる音がした。
「……え?」
ノルンは恐る恐る背後を振り返る。そこには倒れているベルフラウの姿があり、ノルンは目を見開く。
「ベルフラウ!!!」
普段大声を出さないノルンが悲鳴に近い声でベルフラウの名前を叫んで彼女に寄り添う。その声でベルフラウの前を走っていたカレン達も事の異常に気付いて立ち止まる。
「ベルフラウ様?」
「ベルフラウさん!? 一体どうしたの!?」
振り向いたレベッカ達は倒れたベルフラウとその彼女に必死に回復魔法を掛けてるノルンの姿を目撃する。
そして、彼女達の後ろには―――
「―――アカメ!!」
「……何ですって!」
レベッカはその人物が自分達である”アカメ”であることにすぐさま気付いて、即座に槍を構えて二人を庇うように前に出た。
カレンもレベッカの言葉に一瞬驚いたが、その少女の姿を見た瞬間に彼女の言葉が正しかったことに気付いて同じように剣を構える。
「ベルフラウさんっ!!」
ルナはそれ以上に倒れたベルフラウの事が心配で倒れた彼女の所へ向かってノルンと同じく回復魔法でベルフラウの治療を手伝う。
「……アカメ、ベルフラウさんに何をした!!」
カレンは怒りの表情でアカメに向かってそう叫ぶ。だが、アカメはカレンの怒りなどどこ吹く風という感じで聞き流しながら言った。
「……お前達二人に用はない。私が用事があるのは、そこの異世界の女神……ただ一人」
「ふざけないでっ!! 何の用事があるのかは知らないけど、私達の仲間を傷付けておいて、ただで済むと思ってるの!?」
「……」
カレンの言葉にアカメは首を傾げる。
「……仲間? その女はこの世界の存在じゃない。お前たちが庇う理由にはならないはず」
「生まれた世界が違うからって何なのよ!」
「アカメ……あなたが何のつもりかは知りませんが、ベルフラウ様の命を狙った以上、こちらも容赦は致しません……!」
レベッカとカレンはそう言ってアカメを睨み付け武器を構えてジリジリとアカメに近付いていく。
「……私とやる気?
そう言ってアカメはうんざりした感じで二人の方に向かって手をかざした。
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