第173話 特務隊とお仕事
「はぁ……終わったみたいだね」
冒険者さん達がピンチだと思い、手助けに入ったけど魔物を倒しきれたようだ。
途中、エミリアの魔法が他の冒険者を巻き込みかけて(むしろ完全に巻き込んでた)、冷や汗掻いたけど姉さんが纏めて回復してくれたお陰で誤魔化せた。
レベッカが上手く誘導してくれたお陰で強敵を孤立させて確保撃破出来たけど、遭遇戦でここまで上位種と戦うのは初めてだったから苦戦をしてしまった。
「と……他の冒険者さん達は大丈夫だったかな?」
僕はそう言いながら周囲を見渡すが、どうやら全員無事なようで安心した。
僕達が加勢に入る前もかなりの数がいたはずだし、この辺はまだまだ魔物が残っているかもしれない。
念のため警戒しながら周囲を見渡したが、特に危険は無さそうだったので安堵し、最初に話し掛けた男の人に声を掛けた。
「終わったみたいですね、大丈夫でしたか?」
僕は戦闘が終わったことに安堵し、緩んだ表情をしてたと思う。
そんな僕を見て彼は少し驚いた顔をしていた。
「ああ。君たちのおかげだよ、本当に助かった」
「いえ、困った時はお互い様ですし……」
無事で良かった。
エミリアの電撃魔法喰らってて、体が硬直して動かなくなってたけど大丈夫そうだね。というか、下手するとこっちが怒られそうなんだけど……怒ってないよね?
「怪我の方は大丈夫かしら?
さっき回復させてあげたけど、まだ怪我してる人が居たら言ってね?」
「と、とんでもない!!見事な回復魔法でした!!」
姉さんの言葉に喰い気味で答える剣士さん。
なんだろう、この人、僕と姉さんで対応が違うような。
「うふふ、ありがとうございます」
姉さんの優しい微笑みを見た瞬間、剣士さんの顔が真っ赤になった。
…………なるほど。
まぁ、その気持ちは分かるよ。
だって姉さん美人だし、あんな風に優しくされたらドキドキするとは思う。
でも、姉さんに、何かしたら、絶対に、許さない。
「レイ、変な独占欲オーラ出してますよ」
「えっ、嘘?」
「はい、出ています。あと嫉妬心丸出しの目付きになっています」
「マジかぁ……」
シスコンのつもりは無いんだけど、
姉さんに変な目を向ける男にはつい……。
「ごめんなさいね。うちの弟が」
僕の方を見ながら苦笑する姉さんに、慌てて首を横に振った。
「い、いや、こちらこそ、失礼した。
私は冒険者グループ<特務隊>のリカルドという。少年、助力感謝する」
リカルドさんか、キリッとしててカッコイイ男の人だ。
細身の剣を携えてて、それが銅に入っている。
「そして、俺が<特務隊>のリーダー、ウオッカだ。
危ないところを助けられちまったな」
こっちの人は壮年の斧使いの男性だ。如何にも貫禄のありそうな人だ。
他の人たちも全員男性で、同じ<特務隊>のグループの団員のようだ。
流石に全員紹介すると長くなるので、そこは割愛する。
「僕はレイといいます」
「私はベルフラウよ、宜しくね」
「エミリアです。……さっきやり過ぎた気がしますけど大丈夫ですか?」
「レベッカと申します。……エミリア様、ベルフラウ様が癒しの魔法を使って下さったので、大丈夫かと」
レベッカがエミリアの魔法についてフォローしてくれた。
エミリアはレベッカさんの言葉を聞いてホッとした様子だ。
その言葉に、リカルドさんは困惑している様子だったが、
「ん?いや、こちらは大丈夫だ。先ほどの攻撃魔法は見事だった」
と、答えた。
もしかして、食らったことに気付いてなかった?
エミリアが魔法を使っていたとき、多分、一番近くで戦っていた彼は直撃を受けたはずなんだけど……。
「そ、そう……それは良かったです。
それじゃあ僕達は旅を急いでいるのでこの辺で……」
気付かれる前にさっさと先に行こう。
そう思い、僕達は自分達の馬車に乗り込もうとするのだが……。
「待ってくれ!君達の強さは素晴らしい。
こんな場所で会えたのも何かの縁だろうし、是非とも一緒に来て欲しい」
<特務隊>のメンバーが揃って頭を下げてきた。
「え……?」
予想外の展開に戸惑ってしまった。
◆
「……なるほど、<特務隊>ですか。
近隣の街で活動している冒険者メンバーの名前なんですね。
……何か変わった名前ですね」
「名義的には冒険者グループではあるが、
実際はとある長の命令で動く、少数精鋭の軍隊のようなものだ」
僕達が助けた冒険者さん達のグループ、<特務隊>のサブリーダーであるリカルドさん。彼の話によると、依頼の途中で、別の魔物の集団に襲撃を受けたらしい。
「なるほど、その時丁度私達が通りかかったってわけですか」
話を聞いていたエミリアが会話に加わった。
「ああ、おかげで助かったぜ。
で、だ。おめえらの実力を見込んで頼みがあるんだが、聞いてもらえねえか」
と、エミリアの言葉に頷いて、<特務隊>のリーダーであるウオッカさんが話し掛けて来た。ちなみに他のメンバーは馬車の中に居る。
「内容によりますけど、何でしょうか?」
「実はだな、今回の依頼はこの先にある廃坑から、妙に強い魔物が沸いて出てきたらしい。俺らはその原因を調査、可能なら魔物の討伐を任されていたんだが、まぁさっきの結果を見て分かる通り未熟な奴が多くてなあ」
「未熟とは失礼な。私はこれでも剣の修行を5年も続けているのだぞ」
「誰もてめえ一人の事は言ってねえよ」
リカルドさんは自分が馬鹿にされたと思ったのか、ムッとして反論した。
それをウオッカさんがバッサリ切り捨てる。さっきの戦いを見る限り、リカルドさんの動きは良かったけど他のメンバーはそこまで戦い慣れていない印象だった。
「まぁ俺とこいつは良いんだ。
だが、他の奴らはまだ新米が多くてな、討伐の絡む依頼となると少しばかり荷が勝ち過ぎてやがる。だから、代わりにお前らが来てほしいわけだ」
「……悔しいがリーダーの言う通りだ。
我ら<特務隊>は戦闘部隊にも関わらず人材が足りていない状況だ。さっきは遭遇戦だから他の団員を巻き込んでしまったが、彼らは素質を見出されたものの戦闘経験が少ない。そこで、どうだろうか。この依頼、引き受けてもらえないか?」
リカルドさんが再び頭を下げると、他の皆も同じように下げた。
ここまで丁寧に頭を下げられると断るわけにもいかないか。
「分かりました、一緒に行きましょう」
「良いのか?」
<特務隊>の人達が一斉に顔を上げた。
「皆さん困っているみたいですし。それに、エミリアも良いよね?」
「構いませんよ。ただ、報酬の事だけは聞いておきたいですね」
「おう、それなら安心してくれ。
今回の依頼料はあんたらが5割、俺らは5割が取り分だ。
逆に言えば、それだけおめえらの力量を買ってると思ってくれていいぜ」
答えてくれたのはウオッカさんだった。
この人、粗暴な印象だけど、話せばわかるタイプの人かもしれない。
「いいでしょう。
そこまでこっちに報酬くれるなら断る理由もありませんし」
エミリアは乗り気のようだ。僕としても特に問題は無いので了承した。
こうして、僕達は一緒に行く事になったのであった。
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