第95話 決戦?
「……ここは?」
気が付くと闘技場のような場所に僕たちは居た。
「ここは決戦のバトルフィールド、本当は最後の関門として元々儂が力試しとして戦うつもりで作った場所である。観客はおらんが見てくれは闘技場に似ているじゃろう?」
どうも完全に姉さんとミリクさんの喧嘩に巻き込まれてしまったようだ。
「これって、ミリクさんと戦うって展開ですよね……?」
「うむ、元々そのつもりじゃったからな!」
やっぱりか。
「もう、姉さんが余計なこと言うから……」
「えぇー、レイくんミリクの味方なのー!?」
「そういう訳じゃないけどさぁ……」
「まぁよい、どちらにせよ戦ってもらうからのぅ」
そう言ってミリクさんは無手で構える。
「仕方ないか……レイくん、頑張りなさい!」
「はい……って、え?」
なんか普通に応援されたんだけど……。
というか、いつの間にか客席に姉さんが座ってる!
「レイ、この際ミリクさんをボッコボコにしてやってください!!」
エミリアにも応援された!っていうか何で客席にいるの!?
「レイ様、ふぁいとー!」
レベッカもそっちにいるし!
「え、これ姉さんの喧嘩じゃないの!?」
「ほれ、ぼけっとしとる暇はないぞ?」
しまった、考え事をしてる場合じゃなかった!!
ミリクさんは素手のままものすごい速度で殴りかかってきた!
「くっ……!」
僕は咄嵯に回避行動を取る。
すると先ほどまで僕の立っていた場所には、大きなクレーターができていた。
「危ないな!?」
「おおー、中々の回避じゃなぁ~大したもんじゃ」
褒めてくれるけど、今避けなかったら普通に死んでたよ!?
「っていうか、ミリク!
なんで貴女<分身体>じゃなく本体で戦ってるのよ!?」
え、ミリクさん本体なの?
「<分身体>でも良いのじゃが、そっちだと普通に負けそうでの」
それは褒められているのだろうか。
「とはいえ、レイよ。儂相手だと戦いにくいか?
女神だからお主が全力で攻撃しても死にはせんから安心して良いぞ」
といってもミリクさんと戦う理由もないし……。
「ふぅむ、儂好みの良い子ではあるが――」
何言ってんだこの駄女神。
「ふむ、ではこうしてみよう」
ミリクさんは指をパチンと鳴らした。すると――
「きゃあああああ!?」
後ろから姉さんの聞こえる。ってか悲鳴が聞こえたんだけど!
後ろを見ると、何と姉さんが下着姿になっていた。
「ちょっ、ミリク!?貴女何を!?」
「なに、儂が用意していた装備を付けていたものでな。
装備を<無効化>状態に変えただけじゃよ」
それって、もしかしてこのダンジョンで得た装備って全部ミリクさんに制御されてるって事!?
「ま、前言っていた<有効化>ってそういう意味だったのですか……!」
「ミリク様、それは流石に……」
レベッカとエミリアがドン引きしている。
「女神に逆らう愚か者に制裁を、ふふふ!思い知ったか!!」
制裁ってこれの事か、随分軽いな。
「まぁほんの冗談じゃよ、でもお主らも装備消されたら困るであろう?
それが嫌ならレイも少しは本気で向かってくるかと思ってのぅ」
「ミリク……後で覚えてなさいよ……!」
姉さんは手で下着を隠しながらミリクを睨みつけていた。
それでも怒りより羞恥心が勝るようで、姉さんは顔を赤らめて体を隠している。
「レイ、頑張ってください!私たちも裸になりたくないので!」
「レイ様ー、今だけはミリク様に遠慮しなくていいのでお願いします」
ミリクさん、レベッカにも嫌われてない?大丈夫なの?
「さあ、レイ。これで文句はあるまい?」
「ぐぬぬ……」
……まぁ確かにこんな状況になった以上、
僕だって本気でやらない訳にはいかないよね。
「わかった、やりますよ……」
僕は
「ところでその剣は何処から持ってきたのじゃ?
少なくとも儂のダンジョンのものではないと思うのじゃが……」
この剣はジンガさんに作ってもらった武器だ。一部は元々このダンジョンにあった部品も混ざってるが、ミリクさんにも消すことは出来ないはず。
ついでに言えば、エミリアの服も別にこのダンジョンの装備ではないんだけど、多分僕にやる気を出させるために言ってるのだろう。
「まぁよい」
ミリクさんは戦闘態勢に入り、姉さんと同質のオーラが発生する。
「一撃でも儂に当てることが出来ればお主の勝ちにしてやろう」
「本当ですか?」
「嘘は付かんよ、来い!」
ミリクさんは構えることなくただ立っている。余裕のつもりだろうか。
「――行きます!」
僕は一気に距離を詰め、上段斬りを放つ!
「ほう、なかなか鋭い一撃じゃな!」
ミリクさんはそれを左手の人差し指だけで受け止めている。
(嘘っ!?指一本で!?)
だけど僕の一撃はそれだけでは終わらない。
「
僕はその状態から魔法を発動する。
剣から炎が吹き荒れてもう一度ミリクさんに斬撃を加える。
「おっと」
ミリクさんはその炎と斬撃を軽く後ろに下がって回避する。
「まだまだ、剣よ―――!!」
僕は一旦後ろに跳んで、剣に魔力を強く込める。
魔力を込めた剣は鋭さを増し威力が底上げされていく。
「むっ……その性質は
<魔力食いの剣>は前に僕が愛用していた剣だ。
その一部の魔法石をこの<龍殺しの剣>に組み込んで特性を活かしている。
「正解ですっ!」
そしてそのまま連続で切りかかる!
「ふむ、これは中々面白い剣じゃな」
そう言いながらもミリクさんは避け続けている。流石に全ての攻撃を防がれたり避けられたりするわけではないけど、直撃コースでも軽く指で止められてダメージが入らない。
「くっ!」
僕は一旦距離を取って剣を持ち変える。
次に使用する武器は
僕は一瞬だけ少し後ろを見てから、直ぐにミリクさん向き直り魔法を発動する。
「
僕は剣を通して風魔法を発動し、同時に剣を薙ぐ。
するとミリクさんに真空の刃が襲い掛かる。
「ほぅ」と、ミリクさんはそれを軽々躱すが――
「
僕は更に連続して放つ。この武器は<龍殺しの剣>と比べて一撃の威力は低い。代わりに非常に軽く、普通の剣で斬るのと同等の力で二度の斬撃を繰り出すことが可能だ。それを<風魔法>と併用して使うと、絶え間なく飛ぶ斬撃を連発することが出来る。
僕はミリクさんが回避出来ないように、極限まで隙を抑えて魔法剣を連発する。
「なるほどな、連続攻撃に特化した剣か」
ミリクさんは僕の動きを見て感心したように呟いた。
僅かに上体を逸らしたり、軽くステップを踏んだだけでミリクさんは軽々と躱していく。
だが僕はそれを無視してどんどん隙を減らして攻撃を連発していく。
「お主も大概、負けず嫌いじゃのう……」
呆れたような声を出しつつもミリクさんは楽しそうだ。
「はぁぁぁぁぁ!」
僕は叫びながら次々と剣を振るう!
「しかし、それだけでは少々単調じゃのう、どれ少しこちらから――」
と、ミリク様がこちらに歩もうとした瞬間に――
「
後ろからレベッカの強化魔法が僕に付与される。
実はさっき後ろを見た時にレベッカにアイコンタクトを取ったのだ。
僕はレベッカの強化魔法で銀色のオーラを纏う。
「うおぉ?」
ミリクさんが一瞬困惑した瞬間に僕は飛びかかる。
先程までよりも数段速いスピードで接近する僕に対して、ミリクさんは驚愕の表情を浮かべた。
「ちぃ!」
ミリクさんは咄嵯に右手を前に出す。おそらく防御のつもりだろう。
だが、僕の狙いはそこではない。
「むっ!?」
僕はその手を掻い潜り、ミリクさんの懐に入る。
「終わりです」
そしてミリクさんの胴に向けて剣を突いたのだが、剣が当たる瞬間にミリクさんの姿が掻き消えた。 そのせいで全力の突き攻撃が盛大にスカってしまった。
(え、今どうやって――?)
「惜しかったのう」「わぷっ!」
突然横からミリクさんが現れ、僕は抱きつかれた。
慌てて離れようとしたが、何故か体が動かない!
「<空間転移>を使った。やろうと思えば緊急回避にも使えるのじゃ」
女神のスキルは反則過ぎる――!!
「というわけで
ミリクさんは僕を抱きしめたまま魔法を発動する。その瞬間に僕の外側からパキッと割れるような音がして、僕に掛かっていた強化魔法が全部消えてしまった。
「くっ……!離してくださいっ」
僕は屈辱と綺麗な女性に抱きつかれているという事実で恥ずかしくて振りほどく。
ミリクさんは軽く後ろに跳んで僕から離れた。
「おっと……ううむ、儂にももう少し懐いてもよいのじゃぞ?」
ミリクさんは残念そうにして、また姿が掻き消える。
すると、僕の正面二十メートルほどの距離にミリクさんは再び転移した。
「――っ!!」
僕は再び剣を構え直す。やはりというか底が知れない強さだ。
僕はミリクさんの出方を伺い、僅かに静止して向かい合った。
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