第五章 たまにはダンジョンを離れて

第69話 巻きでいこう

 ―――地下一階

「ここから入るのは久しぶりだね」

 一番最初の階層だ、もう大分前になるだろうか。


「ふむ…不思議ですね…あの森からこれほど広大な地下通路が存在するとは…」

 ミライさんの感想は僕らが最初に来た時と大体同じだ。

 僕達は当時と同じように進んでいく。

 途中の雑魚の魔物はもはや説明の必要もないだろう。


<中級氷結魔法>ダイアモンドダスト」「はっ!」

 地下一階層目のボスをエミリアとレベッカがサクッと倒す。


 ―――地下二階

「ここは階段がかなり長いです、それと途中で大岩が転がってきます」

「えぇっ!?大岩ですか……!?」


 途中の階段を注意深く下っていくと確かに途中で大岩が出てきたと思われる場所があった。おそらくここから大岩が用意されていて、階段途中にトラップがあってそこで起動して落ちてきたのだろう。


「この準備万端な大岩どうします?」

「砕いておこう」

 僕は魔力食いの剣に魔力を込めて適当に切り刻んでおいた。


「け、剣で大岩を……!?」

 その後長い階段を降りて二手に分かれた部屋を進んだ。


「じゃあ二人とも、後でね」

「はい、じゃあすぐ後でね、レイくん」


 今回は僕とエミリアとミライさん、もう片方はレベッカと姉さんで進むことにした。

 分かれ道を進み突き当たり大きな部屋に入る。


「ミライさん、上からゴブリン降ってくるから端の方に居てください」

「えっ?降って……?」

「あ、来ましたよ、レイ」


 言ってる傍からゴブリンウォーリアーが落ちてきた。ついでに入り口が封鎖された。


「こ、こんな大きなのがゴブリンなんですか!?ゴブリン召喚士より強そうなんですけど…?」

 実際のところどっちの方が強いのか分からないけど、装備考えると召喚士はこいつには勝てないかも。


「レイ、その斧叩き落としてもらえます?邪魔なので」「了解」

 力は強いが攻撃が単調なこいつは比較的攻撃を誘いやすい。事前にレベッカに強化魔法を貰っているので、大ぶりな攻撃を数回躱して攻撃に転じる。


「はっ!」

 魔力を込めた剣を斧に叩きつけて、大部分を破損させる。

「ありがとうございます。<交差する奇襲>クロスエアレイド

 エミリアは初級風魔法を二つを同時展開し、

 二つの真空の刃がゴブリンウォーリアーの首元を狙い切断した。

「さっ、行きましょうか。レイ、ドロップした魔石拾っておいてください」

 落ちた魔石を拾って僕たちはその場を後にする。


「あ、レイくんおかえりー」「ただいま、姉さん」

 僕達より早く姉さんとレベッカは部屋から出ていた。


「レイくん、凄いのよ!

 レベッカちゃん、ゴブリンが出た瞬間に重力魔法で動き止めて、気が付いたら倒してたの!」

 多分『重圧』の魔法から『初速』で瞬間移動して急所突きして倒したのだろう。


「あ、あっさり攻略しちゃいましたね」

「あ、ミライさんまだですよ」「え?」

 ここは最後の部屋でゴブリンの集団に襲われる。


「レイ、ミライさんを守っててください、すぐ終わりますから」「はーい」


 僕はミライさんの前に立ち塞がり、敵の出現を見守る。


 そして登場した瞬間―――


<魔法の矢>マジックアロー超連射!」

 姉さんが一秒間に五発くらい魔法を連発してゴブリン達をなぎ倒す。

 命中率は大体2/5くらい。絶対適当に撃ってるよね、味方に当たらなきゃいいんだけど。


 後方はレベッカがあり得ない速度で動き回って敵をなぎ倒してる。弓使わないの?

 エミリアは最初に適当に固まってるゴブリンにファイアストームを撃って後はミライさんと一緒に僕に守られている。


「レイくん終わったよー」

「レイさま、掃除終わりました」

「お疲れ様ー」

「……………」


 ―――地下三階

「誰か道覚えてる?」

「あ、わたくし大体は覚えております」

 レベッカが道を覚えているということで案内してもらった。


「エミリア」「<炎球>ファイアボール

 魔物の出現ポイントは部屋に入った瞬間エミリアがぶっぱして突破した。

 それでボス戦―――なのだけど


「「「「誰?」」」」「……え?」

 確か、以前戦ったのは白い狼みたいな魔物だったと思うんだけど…。

「見た目全然違いますね…」

「思い出した、こいつ確か<合成魔獣>キメラだ」

 エニーサイドの周辺の畔に出現する魔獣だったはず。でも少し姿が違うかな?


 目の前にはキメラがこちらを威嚇し、口から火を吐こうとしている。


<極光の守護>オーロラバリア

 姉さんの魔法で僕たち全員にオーロラの防御魔法が付与される。


「じゃあ、足止めするからよろしく」

「了解です」「レイさま、お願いします」

 僕はマジックソードを抜いてキメラにに立ち塞がって後ろに行かせないようにする。

(以前、カシムさんがやった戦い方と同じだな)


 キメラは炎を吐いてきたが――

 姉さんの防御魔法と装備のおかげでほぼダメージを受けない。


「やっぱりドラゴンの炎が別格だったか、っと!」

 僕は炎を突っ切って、キメラの顎から上を切り上げる。


「グアアアアアアアアアアア」

 叫び声を上げつつ、爪を振り上げるがそんなものに付き合う気はない。

 後方に下がりつつ、様子を見守るがすぐ終わった。

 最初にレベッカの弓の五連射が入り、その後、エミリアの雷撃魔法でキメラは沈んだ。


「魔石は手に入るけど、報酬はやっぱり再ドロップしないみたいだね…」

「そうみたいですね…残念です、売ればお金になるでしょうに…」


 ―――地下四階

 流石に山登りはしんどいので、一旦脱出魔法で地上に戻ってから宝珠で頂上に来た。


「え?ここダンジョンですよね!?」

「はい、そうなんですけどね……」

 どうみても山の頂上でダンジョン要素の欠片も無い。

「ミライさん、多分しばらく居るとボスが動き出すので、ちょっと下に避難して貰えますか?」

「えっ?あっはい!」


 ミライさんだけちょっと頂上から離れた場所に待機してもらう。

「レベッカ、私とベルフラウさんにシェアリングして貰えますか?」

「はい、<魔力共有>シェアリング


 シェアリングは魔法力を共有する魔法だ。

 発動中は消費した魔力が無くても片方があれば魔法を使えるようになり、

 解除後は魔法力MPが平均化される。


「レベッカ、ありがとうございます。ミライさんを下まで連れてってあげてください」

「はい、ご武運を。ではミライさま、行きましょうか」

「あ、はい…」

 ミライさんとレベッカを見送ったあと、僕たちは頂上の真ん中にある岩の塊に近づく。


「エミリア」

「はい、じゃあベルフラウの魔法力使わせてもらいますね」

 そして―――

<炎球>ファイアボール」「<炎球>ファイアボール

<炎球>ファイアボール」「<炎球>ファイアボール

 敵が動く前にエミリアがファイアボールを連発してそのまま撃破した。

 その後、ミライさん達が戻ってきて調査を開始した。


「ダンジョンに見えませんが、ここはダンジョンなんですね……」


 ミライさんは興味深く調べている。

 実はここは見た目山の頂上だがよくよく調べてみると壁があるのだ。

 つまり実際はダンジョンの中である。


「皆さん、ありがとうございました。調査はもう十分なので帰りましょうか」

「もういいんですか?」

「はい、四階まで調査出来れば十分でしょう。

 あとは困難で進めないと言えば向こうは何も言えないはずです」


 ミライさんがもう十分という事で僕たちは脱出魔法で地上に戻った。


「今日はありがとうございました、今日は遅いので明日出発しましょう」

「いえいえ、それではまた明日お願いしますね」


 そう言って僕たちはミライさんと別れた。


「それにしてもミライさんのおかげで何とかなりそうで良かったよ」

「そうですかね…私は割と遠回りしてるような気がするんですけど…」

 そのままサラマンダーに挑んでも意外と戦えるのでは?とエミリアは思ってるようだ。


「どうかしらねぇ…小型のドラゴンでもあの強さだったし、レイくんが警戒するのも分かるわ」

「レベッカとしては、勝率上げるために時間掛けるのは悪くない選択だと思います」


 良かった、全体的には僕の案を支持してくれてるみたいだ。


「それじゃあ、明日朝集合で」

 明日は馬車で現地までミライさんと一緒に向かうことになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る