第18話 登録
食事を終えた僕たちは早速受付に向かいギルド登録を済ませることにした。
(それにしても、さっきのレベッカの魔法凄かったな…)
何も無い場所から突然槍が出現したのだ。その後、気が付いたらいつの間にかその槍も消えてた。
「……?」
横にいるレベッカを見る。…彼女は凄い魔法使いなのだろうか。
「レイさま?」
「あ、いやさっきの魔法凄かったなって…」
しまった、つい見つめてしまった。
「あの魔法でございますか?
レベッカは普通に使っていたものなので…珍しいものだったりするのでしょうか?」
あ、あれを普通に…?とんでもない高位魔法とかじゃなくて?
「そ、そうなんだ…僕もそんなに魔法に詳しくないから…」
乾いた声でははは、と笑う。僕が今使える魔法ってもしかしてすごく弱かったりする…のか?
ちなみに今はギルド受付近くのソファー待機している。
冒険者登録する時は奥に一人ずつ呼ばれて検査をするらしい。今はベルフラウ姉さんの番で僕らは呼ばれるまで待っている状態だ。付き添いでエミリアも一緒のソファーに座っている。
「はーい、お姉ちゃんですよ~レイくん、お待たせ―」
暫くしてお姉ちゃんが帰ってきた。
「おかえりお姉ちゃん、検査ってどんなだった?」
「えっとですねぇ、体を触られたり魔力を計測されたりとか、だったよ?」
か、体を……!?姉さんの胸とか触られたの!?
「ね、姉さん大丈夫なの!?」
もし検査した奴が姉さんにおかしなことをしてたら許さないぞ。
「う、うん…大丈夫だよ?レイくんどうしたの?」
「レイ、落ち着いてください。貴方が考えているようなことはありませんから」
そうエミリアに諭されて落ち着く。良かった、痴漢はいなかったんだね。
「レイさま、検査の時間です。受付の奥にどうぞ」
次は僕の番のようだ。僕はみんなに声を掛けてから言われた通り奥に進む。
「あれ、ミライさん?」
さきほど報酬の時に立ち会ったミライさんが居た。
「レイさん、さっきぶりですねー。よろしくお願いしますね」
手を振りながら笑顔で応えてくれる。近くでみると本当に綺麗で可愛い感じの人だ。
見た目は姉さんと同じくらいの年齢かな…。いや、姉さんは自称永遠の17歳だけど。
「ええと、検査って話ですけど僕は何をすれば?」
「そうですね、レイさんは戦闘経験はありますか?」
「えっと、あります」
スライムとかゴブリンとか、あと意味の分からない化け物とかと戦った。
「どういった武器で戦いました?それか、どういう魔法で戦いましたか?」
武器と言えば、剣と…石かな。魔法は魔法の矢とか炎魔法かな。
「剣…と、石を投げてスライム倒したり…魔法の矢とか初級攻撃魔法とかでも戦っていました」
「なるほど、ハイブリットな魔法戦士ですね~」
魔法戦士、そうなのかな…なんだかカッコいいかも…。
「ではレイさん」
「はい」
「脱いでください」
「はい……はい!?」
この人今なんて言った!?
「あ、上半身だけで構いませんよ、筋力を計測したいだけなので」
そ、そういうことか…紛らわしい。
僕は言われるがままにトレーニング機器っぽい魔法アイテムで力を測ったりした。
「次は魔法力ですね、ひとまずこれに向かって魔力発動してみてください」
これと言われたのは壁に飾られてる四角いオブジェだった。
魔力発動…確か、初歩魔法の一つだっけ。
初歩魔法の基本的に4つの魔法が基礎魔法として扱われている。
一つは
これは指から魔法で作った矢(僕の場合弾丸を飛ばすイメージの弾)を飛ばす魔法だ。
大体の魔法の基礎として習うらしい。
二つ目は
簡単に言えば指から小さな火を出すだけの魔法だ。ライターみたいなもの。
自然干渉魔法と言われる魔法の基礎らしい。
この<点火>と<魔法の矢>を両方習得することで『初級攻撃魔法』を覚える段階になるとか。
三つ目は
大したことない怪我の治療の前に血止めの為に使うらしい。姉さんに前使ってもらった。
回復魔法の基礎となる魔法だ。
そして四つ目が
基礎魔法で最も基礎と言われる。名前の通り『魔力を発動』させるというもの。
これ自体は何の効果も無い魔法で、大半の魔法は発動工程に<魔力発動>が組まれている。
僕は最近までこれを使わないままで
(エミリアと出会ったばかりの時に貰った指輪、あれが魔力発動の代わりだった)
異世界に来たばかりの時は魔法を扱えるだけの素養が無くて、魔力発動を何かしら肩代わりしないと他の魔法を使うことが出来なかった。指輪を付けた時の「指先に熱を感じる」という効果、あれこそ<魔力発動>だったんだ。
でも今なら…と、指輪を外して言われたオブジェに向かって手のひらを合わせる。
「
すると、オブジェは赤く点灯し、ミライさんが何かをメモしていた。
「はい、これで終了です。お疲れ様でした」
検査が全て終わったので僕は着替えて受付のソファーに戻っていった。
◆
「お疲れ様です」
「レイくん、おつかれー」
「おつかれさまでございます、レイさま」
と三人が出迎えてくれる。
「ありがとう、レベッカとエミリアを呼んできてくれってミライさんに言われたよ」
「そうですか、分かりました。それなら一緒に行きましょう、レベッカ」
「しょうちしました。それではレイさま、ベルフラウさま、行って参ります」
二人を見送った後、姉さんと二人で少しソファーでまったりしていた。
◆
「ただいま戻りました」
「ただいまです」
「「おかえりー」」
四人とも検査を終えて結果が出るまで少し待機だ。
「ところで何でエミリアも検査を受けたの?」
「多分すぐ分かりますよ」
「?」
と、その後少し待った後にミライさんが出てきた。
「お疲れ様でした。結果が出ましたのでこちらのシートをご確認ください」
と渡されたので自分のシートを見てみる。
レイLv10程度(魔法剣士タイプ)
筋力 D-(戦士として少し足りない)
持久力 D(前衛をするには心もとない)
速度 C(戦士として標準クラス)
魔力 E(魔法訓練生クラス)
総合評価:C-ランク
備考:武器も魔法どちらも素養を感じますが、基礎能力をもう少し磨きましょう。
………なんか、すごく微妙な気がする。
こういう時ってゲームだとすごい能力が高かったりするものでは…。
皆はどうなのだろうか…?
「えっと…」
横を見るとレベッカが神妙な顔してシートを見ていた。
つい気になったので悪いと思いつつ覗き見てしまう。
レベッカLv9程度(槍・弓使い、補助魔法使い)
筋力 F(武器を使う能力が少し足りていません)
持久力 E(冒険者として最低ランク)
速度 D(魔法使いとしては標準クラス)
魔力 C(魔法使いとして平均以上)
総合評価:Dランク
備考:どうやって武器を運んでいるんですか?
あれ、ものすごい魔法使いと思ったらそこまでじゃないのか…?
備考欄の「どうやって武器を運んでいるんですか」って書いてるのミライさんなのかな?
「……! レ、レイさま、恥ずかしいです!見ないでくださいまし!」
「あ、ご、ごめん…!」
レベッカはすごく顔を赤らめている。
ついマジマジ見てしまった。これって女の子に対してものすごく失礼なことなのでは…。
「レイは結果どうでしたか?」とエミリアに声を掛けられる。
「うーん、何かイマイチ…」
「そうなんですか?どれどれ…?」
って、エミリア平気で僕のシート覗いてきたんだけど!
「結構良い感じじゃないですか、初めて冒険者になってこれは結構良いですよ?」
「え、そうなの?」
「私も最初はC-ランクだったんです」
『最初は』ってことは?
「気になります?ほら」
とエミリアは自分のシートを僕に見せてくれた。良いのかな…見ても…。
エミリアLv13程度(魔法使い)
筋力 I(武器を扱う能力が全くありません)
持久力 D(魔法使いとしては十分なレベル)
速度 D(魔法使いとしては標準クラス)
魔力 A(魔法使いとして非常に才能がある)
総合評価:Bランク
備考:あとは速度を鍛えれば完璧です。
これまた…かなりの一点特化型…。
「まぁ魔法使いはこんな感じですよ、今回は私の勝ちですね」
「ぐぬぬ……あ、エミリアこれをしたかったんだね」
「ええ、以前からどれだけ成長したかを確認したくて」
「レイくーん、見せ合いっこしましょ?」
「良いけど…ほら」
姉さんのシートを見せてもらう。あれ?拒否されたのレベッカだけ?
ベルフラウLv25程度(聖女)
筋力 Z(どうやって生活してるか疑問なレベル)
持久力 B(その筋力でこれはおかしくないですか?)
速度 E(冒険者として足りないレベル)
魔力 SS(飛び抜けて最高峰クラス)
総合評価:AAAランク
備考:魔力は非常に高いですが魔力発動もロクに出来ないのはおかしくないですか?
「……ねぇさん」
何だこの極端な能力…っていうか姉さん<魔力発動>出来なかったんだ。
「違うの!魔力使うのに慣れてなくて時間が掛かっちゃって…」
「いや、それもあるけど…」
僕がLv10、レベッカLv9、エミリアLv13、姉さんLv25って一人頭抜け過ぎてる。
何より魔力SSって尋常じゃない。エミリアでAクラスなのに、やっぱり元女神はすごい。
それなりに強くなったつもりだったけど、まだまだ未熟と分かった日になった。
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