第3話 魔法使いさん
女神さまと二人で異世界にたどり着いたレイ
そこに襲い掛かるスライムの集団!
お腹が膨れて速く走れないレイとフラウ(女神さま)!
そこへ―――
「二人とも、危ないから離れていてください!」
「
2人を助けたのは、とんがり帽子を被った小柄な女の子だった!
「大丈夫ですか?」
一瞬でスライムの集団を燃やした少女はこちらを振り向いて言った。
「「大丈夫、ありがとうございます」」
二人してお礼の言葉がハモった。
異世界の人とちゃんと言葉が通じてるみたいだ。
これで言葉の壁は大丈夫そうだね。
それにしてもさっきの炎は魔法って奴だろうか?
異世界と言えばハイファンタジー。ファンタジーと言えば魔法と言われるくらい魔法は必須に書かれている。僕らの世界にも空想上の存在として魔法は描かれるが、実際にそんなものはない。
杖を掲げれば炎や氷を出し、時に空を飛んだり雷を振らせたり、傷を癒したり壊れた物を元通りにしたりと空想の魔法はまさに万能な扱いをされている。
似たようなものに超能力とかいうものもあるが、昭和時代に超能力少年が流行っていたらしいけど今の時代にはどこにもそんな人は存在しない。遊べば超能力の勉強が出来るとかいう詐欺まがいのクソゲーとかあったらしい。その監修した人が超能力者だったとか。
この小柄な少女の恰好を見る。
黒いマントに黒いとんがり帽子、それに魔道士っぽい服にちょっと短めのスカート
いかにも空想やゲームに登場する魔法使いみたいな格好だ。しかも結構可愛い。
黒髪の黒目だが日本人に比べて瞳が少し大きく、歳は自分と同じくらいだろうか。
「あ、あの、さっきの魔法!?」と、つい喰い気味で聞いてしまう。
「魔法です。見るのは初めてですか?」
やっぱり魔法だったか!初めて見る魔法に僕は目に見えて興奮していた。
「ごめん、初めて見たのでつい興奮してたよ。僕は、レイと言います」
「私は、ベ………フラウです…よ?」
ベルフラウですって言いかけたのを止めたんだろう。自分で疑問文にしてるよ。
「レイさんとフラウ?さんですか
私の名前はエミリアです。お二人は髪の色が似てますけど、姉弟でしょうか?」
「はい」
「えっ」
えっ、と言ったのは僕。はいと言ったのは女神さまである。
何で肯定してんですか?
「ちょ、女神様? じゃなくて、フラウさん?」
「あ、エミリアさん、ちょっと待っててくださいね?」
「???」
2人してちょっと離れてこそこそ相談する。
「女神さま? 何で姉弟と言われて肯定してるんですか」
当然だが僕たちは少し前に会ったばかりだ。
「私たちが家族ってしておいた方が色々都合良いかな、と思ったんです。
ほら、私たちって髪色は似てますし、どことなく顔立ちも似てるじゃないですか?
最初にそう言ってた方が関係を疑われなくて済みますし」
いや、髪の色はともかく別に顔は似てないような…
「私が下界に降りてきてると本来のこの世界の神と信仰を壊しかねません。
だから周りには普通の人であると思わせておいた方がいいと思うんです」
なんだかよく分からないが、神様が二人いると不味いということかな。
「まぁ構いませんけど…」
家族に思われても支障は無いだろう。
「はい!よろしくお願いします!」
どうでもいいけどこれエミリアさんに聴かれてないかな?
そして方針が決まり戻ってくる
「お待たせしてごめんなさいね、エミリアさん
私はフラウ、レイくんとは”姉弟”の関係なんです!
よろしくお願いしますね!フフフ!」
不自然過ぎる!姉弟の部分強調し過ぎだし、いつの間にか『レイくん』になってるし。
「はぁ……お二人は家族関係なのですね。……何か怪しいけど」
今怪しいって言われたよね?
「僕とフラウさんはそういう関係ってことで…」
僕の言葉にエミリアは反応し、こう言った。
「フラウさん?姉弟なのにさん付けで呼ぶんですか?
私もたまにそう呼びますけど、珍しいですね」
言われてみると、家族間でさん付けは少し不自然かもしれない。
「人前で言うのは恥ずかしくて……」
「普段は何と呼んでいるんですか?」
普段と言われてもなぁ…。
少し考えて、疑われない回答を考えて僕は答えた。
「普段は、フラウお姉ちゃんって……」
言った途端に後ろの女神さまがすっごいニコニコし始めたんだけど……。
お姉ちゃんって言い方が恥ずかしいから変えてたと思わせられれば成功だ。
「あー、確かに人前でお姉ちゃんは初対面では言い難いかもですね」
良かった、納得してくれたか。
「どうやら無理矢理言わせてしまったようですね、ごめんなさい。
レイさんの方は私と年も近いみたいですし、エミリアと呼び捨てで構わないです。
代わりに私もレイと呼ばせてもらいます」
エミリアは僕に手を差し伸べる。僕も手を伸ばし握手をする。
「フラウさんのことはそのままフラウさんと呼びますね」
「ええ、私も貴女の事はエミリアさんって呼ぶことにします、よろしくね」
明確に年上に見えるからさん付けなのだろうか。
「では改めて私の自己紹介をさせてもらいます。
私はエミリアです。ゼロタウンの冒険者ギルドから派遣された魔法使いです」
ゼロタウン?冒険者ギルド?
後者はなんとなく分かるけど、ゼロタウンは街の名前だろうか?
「ゼロタウンって街の名前だよね。派遣されたってことはエミリアはここに用事があるの?」
「ここというか、この先にある湖の近くの村に依頼されたんです」
そういえば僕たちの目指す先は大きな街と、反対方向に人が住む場所があったんだった。
「二人はどちらに行かれる予定だったんですか?」
その質問には女神さまが答えた。
「私たちも街名は詳しく分かっていなかったんですが、
おそらくエミリアさんがやってきた場所を目的にしていたんだと思います」
「なるほど、ここから半日くらいは掛かると思いますが、道分かります?」
想像以上に道のりが長かった。
「は、半日はちょっと想定外ですね…」
「道も…ちょっと…」
エミリアに会わなかったらきっと道も分からず食料も無くて散々な事になってたかもしれない。
「ふむ、分からないようですね。
どうでしょうか?お二人が良ければ、私の仕事の依頼が終わるまでの間は待ってもらって、
後で私が二人をゼロタウンまで送り届けることも出来ますが?」
それはとても有り難い話だけど。
「良いのかな?」
「どうせ私も終わったらゼロタウンに帰りますからついでです」
「じゃあ、それならよろしく――」「駄目ですっ!!!」
よろしくエミリアって言おうと思ったら女神さまが割り込んできた。
「女神様? じゃない、フランお姉ちゃん、急にどうしたの?」
「これは私とレイくんの二人だけの旅なんですっ!他の人の同行は許しませんっ!」
何言ってるの、この唐突なわがまま女神さまは……
「あの、無理にとは…」とエミリアは女神さまの豹変に戸惑っている。
「ちょ、ちょっと待ってて…お姉ちゃんを説得するから!」
「女神さま、これは一体どういうことですか?」
エミリアから距離を取ったのでここなら聞こえないだろう。
話が上手くいきそうだったのに、流石に僕もちょっとだけ怒っている。
「お、怒らないで、レイくん……。
だって、エミリアさんが付いていったら、家族二人旅が出来なくなっちゃう…」
家族ってフリだけじゃん。というかさっきから女神さま色々おかしい。
「もしかして、女神さま、嫉妬とかしちゃってます…?」
ギクッと反応する女神さま、えぇ……マジで?
「だって……初めて出来た弟だもん。
いきなり他の女の子が出てきて、私以外の女の子と仲良くなっちゃったら、どうすれば…」
ふえぇ…と泣き出してる女神さま。もしかして、こっちが素の性格なんだろうか…。
(転生の間でみた女神さまは綺麗で大人っぽくて、凄く素敵だったのに……)
「別に他の女の子が居たとしても、女神さまを嫌いになったりはしませんよ」
「……本当?」
「本当ですよ」
そう念押ししていうと、女神さまは泣き止んだ。
女神さまがこんな感じの人だったとは……。しばらくは姉として女神さまと過ごすのか。
「あ、どうでした?なんか色々こじれてたようですが…」
「うん、大丈夫、僕たち二人ともエミリアに付いていくことにしたから」
ちなみに女神さまはさっきから僕の裾をつまんで離してくれない。
「そうですか、よろしくお願いします。レイ、フラウ…さん?」
「よろしくエミリア。……フラウお姉ちゃん、返事」
「はい…」
こんな感じで、僕と女神さまは当面『姉弟』という関係になった。
まぁ偽姉なんだけど、悪くはないと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます