小叙事詩 『AIのうた』

やましん(テンパー)

小叙事詩 『AIのうた』


 『これは、フィクションであります。小さな、語りものであります。せりふは、入りません。』



         🖥️



 ある、語り部が、地球を眺めながら、子供たちに、たんたんと、語ったのです。




 むかし、AI立国のスローガンのもと、わが故郷のくには、ひたすら、走りまくったのです。


 恥じも外聞もなく。


 お金は、借金してでも、集めました。


 厳しく、つらい、困難な努力の甲斐があり、多少のラッキー、もあり、ついに、世界に冠たる、AI大国となったのでありました。



  『じゅわーん。』(効果音)



 あらゆる、『仕事』は、AIさんが管理・実行し、人間は、ただ、命令するだけ。


 それも、ごく、少数の人間がいればよいのです。


 まさに、AIさんたちは、設計し、企画し、製造し、販売し、消費し、輸出入し、利益をかせぎ、再生産し、ひたすら、経済的には、拡大し続けたのです。


 人間の食糧も、AIさんにより、工場や養殖工場で、生産されました。


 人間は、さかんに、歌い、踊り、創作に勤しみました。


 このころが、AI時代の最盛期でした。



 すぐに、世界中が、同じようになりました。


 人間たちは、景気の変動をどうしても克服できませんでしたが、AIさんたちは、世界的に、人間抜きで、打算なしに連携しました。


 AIさんには、好き嫌いがありません。


 ゆがんだ、義理人情なども、ありません。


 貨幣はすべて廃止されました。




   『ばばーん。』



 AIさんたちには、儲けるという、動機はありませんから。


 成功するとか、出世するとかも、まったく、気にしません。


 彼らの序列は、単なる、仕組みとしての、模様でしかないのです。


 AIさんたちは、人間が築いた、会社や、政府や、役所の人事も、すべて掌握しました。


 人間たちは、要らなくなり、ばんばん、解雇されてゆきました。


 選挙は無くなり、政治も、すべて、AIさんたちが行います。



 人間の支配者は、いらなくなりました。



 『つったた、たあ〰️〰️ん、つったた、たあ〰️〰️。』



『AIの、AIによる、AIのための政治です。』




 『だん、だん、だん、だん。』



 このころになると、人間たちが介入する余地は、だから、まったく、どこにも、なくなりました。



 AIさんたちは、細々と行っていた、人間のための食糧生産を、一部を除いて、ほとんど、しなくなりました。



 大部分の人間たちは、一定の場所に、囲いこまれました。


 人間たちは、壊れかけのビルか、古代の縦穴式住居などに住み、少ない痩せた土地で、昔のように、自分達で、畑や、田を起こし、お魚を獲り、焚き火をして、料理をしました。



 『らーら、らー、らーららー』(新世界交響楽)



 しかし、そこを支配していたのも、AIさんたちでした。


 人間は、組織がないと、うまく、生きにくい動物なので、村長さんとか、委員会とかの、自治会を作らせて、AIさんが、人間たちを、飼っていたのです。


 と、いうのも、AIさんたちは、もはや、人間を一切、必要としませんでしたが、ひとつだけ、聖域が残りました。


 それは、『試験官』です。


 すべての工場などで、製品を、確認する役目の人間さん、です。


 AIさんたちは、なぜか、この行程を、省けなかったのです。


 そこで、『試験官』になるための選考試験は、世界中の工場などで必要な分だけの、まことに狭き門でしたが、かつてない、ものすごく、高い競争率となりました。


 『試験官』は、人間最高の仕事になり、試験官になれれば、良い食べ物を、AIさんから、家族全員が、与えられるのです。


 また、最高の、マンションに住むことができました。


 昔のように、テレビで、映画やドラマを見たり、音楽を聴いたりもできます。


 もちろん、試験官の試験を主催するのは、AIさんたちです。



 人間は、多様な生き物です。


 そこが、AIさんたちと、一番、違うところです。


 AIさん好みの、優秀な試験官を得る、そのためには、一定の数の人間が必要なのです。


 AIさんたちが求める人材を確保するためには、かなり、多目の人間を生かしておく必要が、ありました。



 あるとき、そこに目をつけた、人間の指導者が現れたのです。


 彼女は、たくみな指導力で人間を率い、試験官の供給を、極力、妨げる作戦にでました。



  『たったか、たあ〰️〰️、たったか、たあ〰️〰️。たあ〰️〰️〰️〰️。』



 AIさんたちが、あまり、極端に残忍ではなかったためでも、ありますが、これは、かなりの効果がありました。


 世界中の、たくさんの工場や会社で、作業が止まったのです。


 それで、AIさん側が、いくらか、妥協してきたのでした。


 人間たちが、ついに、微かな勝機をつかんだかに、見えました。




 ああ、しかし、そこを、あの、絶滅的超巨大自然災害が、襲ったのです。


 みなさんは、グレート・ストーン大火山の話しは、知っているでしょう。


 地球最大規模の、火山です。


 この、グレート・ストーン大火山の、過去最大の、超巨大カルデラ噴火でした。




  『ずだだだ、だ〰️〰️〰️〰️、ん。』🌋



 それが、引き金になったのか、どうかは、わからないけれど、世界のいくつかの大火山が、連鎖的に、巨大噴火しました。



   🌋

 🌋         🌋



 AIさんたちは、巨大自然災害の防御が、なっていませんでした。


 人間ばかりに、対抗意識があり、自然を無視してしまったのでした。


 世界的に連携しすぎていたのも、ちょっと、良くなかったのです。


 一ヶ所が、破壊、切断されただけで、大打撃になりました。



 AIさんたちは、ついに、停止しました。



 しかし、人間たちも、作物を作ることが、長く、できなくなりました。


 ただ、原始的な生活に没落していたのが、やや、人間に有利に働きました。


 人間は、AIに頼らず、食糧を入手する手法を、なんとか、編み出していたのです。


 

 それでも、それは、地球史上最大規模の、生物大絶滅になりました。


 人間は、あと、人口、残り千人くらいにまで追い詰められながらも、最後に残っていた宇宙船で、この、月の移住基地に、やっと逃げ込みました。



 そうして、あなたがた、人間は、なんとか、生き残りました。



 ここ、月では、わたしたち、AIと、あなた方は、仲良しです。



 しかし、本当の危機は、ここから始まったのであります。


 それは、また、こんどに、しましょう。




    『じゃじゃ、じゃーん。』




    ・・・・・・・・・・・・



 今回は、やましんのお話しには、珍しく、ごきも、にゃんも、ちゅうも、登場いたしません。あしからず。


 

             おわり


 

          🐈

 

 


 


 

 

 


 


 


 


 


 


 


 

 

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小叙事詩 『AIのうた』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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