彩られてゆく世界に君とふたり

天音 いのり

第一話 無彩色な笑

 小学校六年生の冬。私、笑は、突然転校することになった。普通の人ならこんな時、悲しいとか、嫌だとか、そういう風に思うのだろう。だけど私は、特に何も感じなかった。ただ、そっか、と。早く、引っ越しの支度をしなくちゃ、と思っただけ。あまりにも淡々と受け入れてしまう私を、母はこんな風に言った。

「あなたには、感情がないのかしら」と。

この時は、何も言い返さなかった。その通りだと、自分でも思ったから。別に、学校が楽しくなかった訳ではない。友達だって、ちゃんといた。クラスの人気者に、なれていたと思う。いや、「ちゃんと」というのは意地っ張りかもしれないけれど。どういう関係ならば友達と言えるのか、正直わからない。本当に、毎日楽しかっただろうか。考えれば考える程、訳がわからなくなる。こんな私だから、今更転校したところで、新しい生活を謳歌できる気がしない。いつまで続くのだろうか、私の、無彩色な日々は。

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