25.非凡太子、王都へ全軍召集させる。

-ジュリアン視点-


 王宮は、かつてないほどに騒然としている。

 全く。どいつもこいつも烏合の衆ばかりだ。


「民衆たちが攻めてきたとの事です」


「王都を囲むように、全方位から暴徒が押し寄せてきています」


「鎮圧部隊は何をしているのだ!」


 ドタバタと兵や役人、大臣たちが大声を上げて右へ左へとせわしなく走っている。

 騒ぐか怒鳴るばかりで、対策の一つも出てこない辺り、今までぬるま湯に漬かり過ぎた結果なのだろう。


 とはいえ、仕方がない部分もある。

 我が国は圧倒的軍事力で他国をけん制し、攻めてきた。

 隣接する国の殆どは、我が国の軍事力を恐れ、属国同然の扱いであろうとも、何も言わず、要求すれば要求通りに通ってきた。


 故に、攻められるという事が無かったのだ。

 勿論。攻められた時の事も普段からシミュレートしてはいる。

 しかし、実際に攻められると、そんなものは意味がないと言わんばかりに、皆焦りと混乱から浮足立ってしまっている。

 

「ど、どういたしましょうか?


 久しぶりに見たザガロ宰相は、痩せこけていた。

 仕方がない。私自ら動くか。


「落ち着け! まったくどいつもこいつも。慌てすぎだ!」


 一喝すると、部屋の中は一気に静まり返った。


「状況を今一度思い出してみるが良い。来ているのは貧困層の暴徒に過ぎない。いくら数が多かろうとも所詮は烏合の集団」


 ふんと鼻を鳴らし、辺りを見渡す。

 椅子に座り、混乱の中物音立てず佇んでいる3人に声をかける。

 アンソン。ウーフ。ボウゼン。この国を代表する騎士団の団長たちだ。


 このような状況においても全く動じる様子が無い。流石は歴戦の勇士なだけはある。


「王国騎士団、近衛騎士団、魔法騎士団全軍に通達する。まずは王都に来ている暴徒どもを鎮圧してくるのだ」


「はっ!」


 団長らが部屋を出ていくと、役人たちも我に返ったように、黙って仕事に戻っていった。

 強国という事に胡坐をかいていた連中には、良い薬になっただろう。


 今回は弟リカルドが来た時の事を視野に入れ、切り札として軍隊を全て王都に集めておいた。

 それ故に他の守備が手薄になり、他国からの侵略を許す形になってしまったが……


 現在王都まで来ている暴徒は、弟のリカルドが先導していると情報が入っている。

 ここでリカルドさえ討てば、後は何も怖くない。 

 流石に王国騎士団全員を相手取るのは、不可能だろう。

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