第29話 ブリードル帝国(その3)

こんにちは。ブリードル帝国皇女フロンです。


 最近、頭が痛い。


 兄である皇太子は全身骨折で、療養中。

 ハイポーションを使って一命はとりとめましたが、予断を許さない状態が続いています。

 重症者が多すぎてハイポーションは皇都の在庫は全て使ってしまった。

 錬金術師達に、ポーションを作らせてはいるが生産は追いつかない。


 商人達は他の街からの、持って来るだけで大儲けなのをいいことに、ポーションの値段をつり上げる。

 後でしっかりと取り締まらなくては!


 城は穴ぼこ! 費用がかさむ。


 今日も会議は大荒れ!


 しかし、宰相のゲス・ザ・アントが、おもしろい提案をしてきた。


 勇者?候補達にパーティーを本格的に組ませてダンジョンに入れてはどうかと言うのだ。


 ダンジョンにはときどき宝箱が湧いて出てくる。

 その中には、高難易度のダンジョンなら全回復薬エリクサーや若返り薬ラーソなど。

 低難易度では魔力回復薬エーテルや回復薬ポーションが手に入ることがある。


 モンスタードロップもたまにある。

 ゴブリンの腰布はいらないが、スヤスヤシープのドロップ品モコモコ綿は高級ベッドやソファーなどに使われて、かなり高く売れる。

 さらにモンスター狩りでレベル上げも出来て、ダンジョンスタンピードの予防にもなる。


 わ・た・し・た・ち、にはいい事ずくめっポイが、あの聖女?が緑の巨人を呼び出した疑惑もあり、召喚者達の不満を溜めさせるのは、危険ではと思われる。 


 それに、最近あの帆山と近衛部隊長の部屋から………


 ブル!


 さっさとダンジョンに入れよう!


……………………………



 俺の名前は杉谷。職業が勇者?になっている。

 普通はクラスという欄に勇者が出るらしい。


 今日はパーティー組まされて、初級ダンジョンというところに入れられた。

 ドロップ品のポーションとかを取ってこいとか言われた。


 はっきり言う。俺は、今ピンチだ。


 勇者?の説明書き通り、スライムが今前にいるのだが……足が動かない。

 剣を振り回していると動かせるが前しか進めない。


 パーティー仲間は、前に出すぎるな!って言うけど、どうしようもないんだよ!


 だが、このことを言うわけにはいかない。


 あの冷血フロンの耳に入ったら、間違いなく特攻要員にされちまう。

 爆弾抱えて特攻なんて嫌だぜ!


 鑑定玉が、ジョブとかの内容まで見えなくて本当によかったよ。


 また、スライムが出てきやがった。帰れねーじゃねーか!

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