第5話第5話「パーティ結成」
冒険者ギルドの説明を受けてる最中に、バタバタと現れた謎の少女。
紫がかった綺麗なプラチナの長い髪に、透き通るような赤い瞳。ややツリ目ガチだが、可愛らしい顔つきをしている。年は僕と同じくらいだろうか? 背丈も僕と大して変わらなさそうだ。
全体的に黒を基調としたノースリーブの服にアームウォーマー、ミニスカートにハイソックス、手には棒状の物を布で巻いてある。あまり人目に見えないようにしてあるという事は、高価な装備なのだろうか?
その少女は、目を吊り上げてアリアさんを指さしている。
「サラ、遅かったね」
「『遅かったね』じゃないわよ! 勝手に一人で進んで行って、はぐれたアンタを探してたの!」
少女の名前は『サラ』と言うようだ。あれこれ捲し立てているが、当のアリアさんは無表情のままだ。話を聞いているのか聞き流しているのか判断出来ない。
どうやらパーティではないが、知り合いではあるようだ。
知り合い同士積もる話もあるだろう、だが僕には関係ない、そのままカウンターに向き直る。あっ、冒険者説明の続きをお願いします。
「サラ、この子をパーティに勧誘するから。職は勇者」
アリアさんはカウンターに向き直った僕の肩を引くと、サラと呼ばれた少女の前に立たされた。
「なんですって!」
「やっぱりパーティの人ですか?」
「だから違うって! ほんと何なのよアンタ!」
どうやら違うらしい、また怒られてしまった。
じゃあ一体なんなんだ?
「サラ達とはパーティ」
「パーティじゃない!」
う~ん、これは埒があかないぞ。アリアさんはパーティだと言い張るし、サラさんはパーティじゃないと言い張るし。話が見えないから口出しもしようがない。
「まだアリアとはパーティじゃないですが、これからギルドでパーティ登録をする予定でした」
うおっ、ビックリした。
気が付くと僕の背後に小柄な少女が立っていた。いつの間に背後に立たれたのだろうか? 全然気づかなかった。
金色の髪、ショートカットで前髪は綺麗に真横に揃えられている。エメラルドグリーンの瞳、年は僕より少し下の12歳位だろうか?
黒と赤を貴重にしたドレス……ゴシックロリータと言う服装だろうか? 頭にはボンネットをかぶっている。
「なるほど、そういう事だったのか、教えてくれてありがとね」
僕は小柄な少女に目線を合わせるために少し屈んで頭を撫でる、が凄く嫌そうな顔をされた。
「チッ」
更に舌打ちもされた。これは手厳しい。
「アリア、アンタ勝手に離れて、そしたらこんなどこの馬の骨かもわからない勇者を勧誘ですって? 流石に相談無しに決めるのは自分勝手すぎるわよ!」
「でも、料理作ったりできる勇者が欲しいって話をしてた」
「確かにしたわね。でも勝手に連れて来いなんて話はしてないわ」
「連れて来てはいけないとも言ってない」
「アリア、アンタいい加減に!」
怒鳴るサラさんの裾を、小柄な少女がクイクイと引っ張る。
そこでサラさんは気づいたのだ。アリアさんが無表情のまま涙を流していることに。
「またやった」
小柄な少女はサラさんの裾を放すと、そのまま待合用のイスに腰を掛ける。
泣き出すアリアさんにどうすればいいかわからず、オロオロするサラさん。
よし、かかわらないようにしよう、僕はカウンターに逃げ出した。しかし回り込まれた。
「アンタが原因なんだから、アンタが何とかしなさい」
そんなのむちゃくちゃだ!
反論をしたい気持ちは山々だが、無表情のまま涙を流してこっちを見ているアリアさん、下手な反論をした瞬間にまた怒りが爆発しかねないサラさん。
どっちの味方をしても地雷を踏むのは目に見えているが、どうしよう。
「だったら、今から相談すれば良いじゃないですか」
小柄な少女が興味なさげに呟く。
サラさんは「はぁ」と深くため息をつき、「もうそれでいいわ」と言って脱力している。アリアさんはやはり無表情のままだ。チャラい職員さんがニヤニヤと見てくるのがイラっとした。
何にしてもとりあえず助かった。この場から僕を助けてくれた小さな救世主に感謝するべきだな。
「ありがとう、キミのおかげで助かったよ。小さいのにしっかり者なんだね」
「リンはこう見えてもサラと同じ15歳です」
「えっ」
少女の姿を見てみる。どうみても15には見えないけど、本人が言うならそうなんだろうな。
「15と言うと、僕と同い年か」
「ってか、アンタも見た目15に見えないんだけど?」
うっ、確かに年齢よりは幼く見られることがあるけどさ。
「チッ」
リンと名乗った少女に、また舌打ちをされてしまった。
どう見ても子供にしか見えないし、サラさんの隣に立っていたら姉妹にしか見えないが。
しかし、舌打ちする姿が少女の見た目なのに何故か様になっているな。まるでチンピラのようだ。
「ふぅ~ん、ところで君なにが出来るか、教えていただいてもよろしいでしょうかねぇ?」
サラさんが目を血走らせながら、思い切りガン付けてくる。こっちもまるでチンピラだ。
一度は矛を収めたものの、誰かに怒りをぶつけないと気が済まないといったところか。せめてもうちょっと可愛らしい方法にしてもらいたいところだけど。
アリアさんが僕の事を話すたびに「へぇ~そうなんだ、キミ凄いねぇ」と言いながらメンチを切るサラさん。
色々言いたい事は山々あるようだけど、僕をパーティに勧誘するという事で話はまとまったようだ。
「別に料理できれば誰でも良かったしぃ」との事だ、それならさっきはそこまで怒る必要無かった気がするのですが。勿論そんなこと口に出したりはしない。
「ところで、女の子のパーティなら、勇者は僕じゃなくて女の子の方が良かったんじゃないですか?」
疑問に思ったことをそのまま口に出してみた、女の子同士―それも美少女と言っても過言じゃないレベルの女の子達だ―のパーティに男が1人入るよりも、女の子の勇者を入れたほうが良いと思う。
下手に男として意識されても困るわけだし、彼女たちも女の子同士のパーティに男が入るのは嫌じゃないのだろうか? その疑問はすぐに消された。
「あぁ、女の勇者はとぉっくの昔に廃止されてるぜ。仕事も能力も無いから勇者になった女の子が、野郎のパーティなんかに入れた日にゃどうなるかボウズでもわかんだろ? 冒険者の男ってのは女の日照りな奴ばかりでよぉ、実際に昔はそれで色々問題があったみてぇだしな。そんで女の勇者は廃止にされたんだとよ」
なるほど、言われてみればそうなるか。
あれ? でもそれならもう一つ疑問があるぞ。
「男同士が趣味の場合は、男の勇者も危ないんじゃないですか?」
「別に男同士、ガキが出来るわけじゃねぇしセーフなんじゃね?」
最悪だ、それって下手したらそういうパーティから勧誘が来る可能性もあったわけか。
アリアさんのパーティについて行こう、今の僕にはとってそれが最善なはずだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます