第3話 妄想癖



屋上で田宮と滑稽なトレンディドラマを演じた後、


体調不良ということで午後から半休をもらって帰宅したNは


ジャージに着替えベットに横たわり、考え続けていた。



何が起こっているのか。



大谷翔平という、百年に一度と言われるスーパースターは


俺の中の妄想なのか。



世界の全てが間違っていて俺が正しいのか。



世界の全ては正しくて俺が間違っているのか。



もしこの二択なら答えは簡単だ。



俺が間違っているに決まっている。



今まで世界のすべてが間違っていたことなんてないのだから。




最も現実的な原因は、


昨日の朝、俺の脳に何か良くない異変が起きた。



記憶とか思考とかそういうところを担う脳の場所が


何か少し壊れたのだ。



壊れたのは村上社長ではない。



俺なのだ。



明日、病院に行こう。



脳を検査してもらおう。



そして、心療内科にも行こう。



もしかしたらMRIとかではわからない変化かもしれない。



心理的に実は何かのストレスがかかっていて



それが原因で、スーパースターを俺の心の中に作り出した。



確かに俺は、昔から妄想癖がある。



いろんな妄想をしてきた。



ウェンブリー・スタジアムのライヴ・エイドで7万人を越える観衆を前に


フレディ・マーキュリーの代わりに歌ったり、


サッカー日本代表の試合に出て、中田ヒデの代わりにたくさんシュートを決めたりした。



全部テレビやYoutubeで観た映像からの妄想だ。



そんな俺だからもしかしたら、


たくさんの野球選手を観るうちに


勝手の想像してしまった、なんてことは十分考えられる。



そうだ、きっとそう言うことだ。



大谷翔平という人物は存在しないのだ。



Nはそう結論づけると、スマホを取り出し


脳神経内科と心療内科の予約を取り、


会社には明日休む旨を連絡した。



仕事は田宮がフォローしてくれる事になった。

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