第62話

 まずは──



 サラさんの『回復魔法』を紐と同期してみるか──



 試すと問題なく、紐に『回復魔法』が同期出来た。


 同期時に【どれにしますか?】とシステムメッセージがあったので、確認すると


 とりあえず“ミドルヒール”にしておいた。



 孤児院の中ぐらいの距離なら問題ないようだな。


 次は本当に使えるかどうか──だな。


 自分を傷付けるのは少し怖いが、ちゃんと効果が発揮されるか確認しておきたい。


「──うお!? 失敗した────」


 俺は腕を軽く【風蛇】で斬りつけてみたら、大量に出血した。


 即座に同期させている“ミドルヒール”を発動すると、傷口は瞬く間に完治する。


「……マジで焦った……“ヒール”じゃなくて“ミドルヒール”にしておいて良かった……」


『回復魔法』さえあれば戦闘中に傷を負っても即座に復帰出来そうだな。


 ただ、魔法を発動するのに魔力が必要だったので、“武技”の場合は体力や気力を消耗するかもしれない。


 後、2回使えるので──もう1回『回復魔法』を紐にストックしておく。ストックしたのは“継続回復(大)”だ。


 使う魔力量は多いが──これなら怪我負いながらでも戦う事が可能なので凡庸性が高い。



 さて、使用回数は残り1回か……選ぶのはやはり、サラさんの『援護魔法』だな。


 狩りの時に見せてくれた『重複強化ディープリケイションバフ』は強力だったので試しにストックしてみるが──


 紐に同期させてもリストには通常の援護魔法しか記載されなかった。


 どうやら技術的な物は同期出来ないようだ。



 まぁ、そんなに上手くはいかないか……他の人の魔法や武技が使えるだけでも十分強みだし良いだろう。



 その時──


『敵襲ゥゥゥッ!』


 ヒメからメールが来たので『マップ』を起動する。


 赤い点が3個、俺の近くにあった。


 確かに目の前に反応があるのに気配が全くわからないし、見えない。


 暗殺者系の職業ジョブか?


 ヒメから教えられなかったらわからなかったな……。


 暗殺者から狙われるような覚えは──



 あるな……代官ぐらいしか思い付かない……。

 あんな事(街中で亀甲縛り)ぐらいで仕返ししてくるのか……心の狭い奴だな……。


 というか何でバレたんだ?


『紐を使う変態はロキ兄しかいないからだよ★ もう街中の噂さ♪』


 あーなるほどね! って──お前が噂流してるんだろうがッ!


 完全に目を付けられたな……。



 ──ガチの対人戦か。


 しかし、どこにいるのか本当に見えないな……『隠密』系のスキルはかなり厄介だ。


 ヒメから教えてもらわなければ普通に暗殺されてたかもしれないな。



 とりあえず、相手の強さがわからない以上──“トリプル”で行こう。


 効果が切れる前に炙り出すか──


「──とりあえず──マーキング捕縛────」


『マップ』と『紐魔法』のコンボで攻撃する事にした。これなら見えなくても攻撃出来るしな。


「「ぎゃっ」」

「ちッ」


 2人だけ、捕縛する事に成功する。

 亀甲縛りの宙吊りの完成だ。


 1人だけ避けられたが、激しく動いた事で『隠密』系のスキルが解除されて視認出来るようなった。


 逃れた人は声から察するに女性だな。


『縛れ』


 …………お前はそれしか言えんのか?!



「この変態がッ!」

「──おわ?!」


 目の前から暗殺者らしき女性はナイフを投げて攻撃してきたので避けると、背後から心臓を突き刺して来た。


“体技”である“受け流し”を咄嗟に使って避けようとするが、避けきれず腕に怪我を負ってしまった。



 かなり速い……“トリプル”状態でも対応するのがギリギリだな。



 暗殺者さんは休む暇もなく攻撃してくるので、傷を負いながらも応戦する。



 この人──Aランク冒険者ぐらい強いんじゃなかろうか?

 さっきから、致命傷は受けないようにしているが避けきれずに傷が増えていってるしな。



 しかし、全く手がないわけではない。


 大量に紐を出現させる【雑草】や【ヒュドラ】を使えば動きを鈍くさせる事も出来るし、“快楽紐”を触れさせればなんとかなるだろう。


 だが、俺には試したい事がある。


 さっき『寄生』で同期させた『援護魔法』の“身体強化魔法”を使いたい。


 俺の予想通りなら“身体強化魔法”は“シングル”並の効果のはずだ。

“トリプル”状態中に使えば、“”状態になれるはずだ。


 現状、スキルでの“クアドラプル”──重ねがけ4つはかなり制御が難しくて出来ないんだよな……なんか暴発しそうになる。


 ドーピングみたいな方法だが、どれぐらいの負荷がかかるのかも一度経験しておきたい。



 というか、そうしないと対応出来ない!


 良し、使うぞ──


「──“クアドラプル”──」


 ──これは想像以上に負荷がかかっているな……1分待てば良い方じゃないかな?


 発動した瞬間に俺の体からミシミシと音が鳴っている。



 さっさと決着をつけよう──


「──?!」


 先程までと動きが違うせいか、暗殺者さんは驚いていた。


 それでも、こちらの攻撃は当たらない。

 まぁ、こっちも普通に避けれるから、速さが同じ土俵に上がったというところだな。


 まだ体術のみで対応しているし、紐も使うか──


「──【風蛇】──」


【風蛇】を放つが、予想外の現象が起こってしまった。


 速さ重視の“紐技”をチョイスしたのにも関わらず、俺の方が速度がなのだ。


 これは──不味いな。決め手に欠ける……。


 既に俺の体から筋肉がブチブチと切れる音が聞こえてきている。


 確かに“クアドラプル”は強力だが、ぼちぼち体が限界だ。


 全身の筋肉痛を何倍もしたような痛みが襲ってきている。


 この痛みのせいで【ヒュドラ】みたいに集中が必要な“紐技”は使用するのは無理だ。


 何か手はないか──


『はよ、して縛れよ。こっちは喘ぎ声が不足しとるんだ』


 うっさいわッ! 今それどころじゃねぇよッ!


 ってか──回復?


 あーなるほど。それならいけるか!?


 俺は先程ストックしたばかりの『』の“継続回復(大)”を使用する。


 すると、体の痛みが取れていく──


 効果は“ミドルヒール”を継続してかけ続けている状態だ。


 これなら継続回復が切れるまで使い続ける事が出来る。


 それと──紐が遅くて足を引っ張って邪魔なので、紐を剣状にして攻撃手段を“剣技”主体に切り替える事にした。



 痛みの無い今ならスキルの同期も出来る──


 何を同期させるかな……さすがに孤児院内で殺人は不味い気がするので攻撃魔法はダメだろうな……。


 そうなると──無力化目的なら『』しかないな……。


 ヒメの望む未来になりそうだ……。


 時間も無いし、さっさと終わらそう──


「──“3段突き”──」


 説明しよう!

“3段突き”とは──かの有名な新選組一番隊組長である沖田総司が使用したとされ、ゲームにも採用されるぐらいの浪漫ある剣技だ。

 頭、喉、みぞおちの急所三か所を、素早く突くだけの技なのだが──この技は速度という点ではどの剣技よりも速い。何故ならたった3回の突きを全力で行うからだ。


 しかも、今回は“快楽のツボ”を3点を突いた。

 その場所は──


 だ。



 俺は今出せる最高速度の突きを3回繰り出す。



 その結果──


「──ふぁ?! んあッ♡ ら、らめェェェェェ──」


 完全にクリティカルヒットした。


 右おっぱい→左おっぱい→陰毛部分の順番で行うと喘ぎ声が3段階で遅れて聞こえてきた気がした。


 そして、“3段突き”の風圧で暗殺者さんのおっぱいと陰部の部分の服が消し飛び──丸見えになった状態で痙攣しながら意識を失った。


「──安心しろ。峰打ちだ──」


 紐なので峰打ちもクソも無いが、実在に無力化しているので、決めセリフを言ってみた。


 峰打ちか……で捉えられてもおかしくないな……。


 それに“3段突き”というよりは“3点同時攻め”と言った方がしっくりくる……。



 俺は目の前を見る──


 男2人の暗殺者は気を失いながら何かに目覚めたように気持ち良くなっている気がしたので、即座に領主邸にぶん投げ(物理的に)て捨てた。


 気持ち悪いからね。



 そして、女性の暗殺者さんは大事な所が見えているので、同じような対処は出来ないと──


 気持ち良く寝ていたサラさんを起こして事情を説明して来てもらう事にした。



 そして、暗殺者さんの所へ連れてきたら──


「──服が破れて、かなり濡れている上にパックリ開いていますが──んですか?」


 俺の肩に手を置きながら(ミシミシと骨がきしむ音を出しながら)、殺気を込めて言われた。


 ここで返答が遅れると間違いなく握力だけで肩が折られる気がしたので──


「安心して下さい。童貞のままですよ」


 と某芸人のようなセリフを無意識に答えていた──

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