さっさと枯れる

 公園で咲いている満開の桜の下で、喪服の黒を宿したようなセーラー服を着た少女二人が寝転んでいる。

 彼女達の体の上に落ちる桜の白さは病的なほど生命力に満ちて輝いていた。

「桜がどうしてこんなに儚げで綺麗なのか知ってる?」

 一方の彼女がそう言う。

「死体が埋まっているから」

 汚れを知らないその口から放たれた黒い言葉を聞いて、問いかけた彼女は笑った。

「そう、死体の美しい思い出を吸っているから、これだけ綺麗なの」

「……うん」

「でも、私が死んで桜の木の下に埋められたら、咲く前にワザと枯れるわ」

「……なんで?」

「花が咲いた後、老いていくのを見たくないから、かな。由利ならどうしたい?」

「……私は」

 問い掛けられた少女は少し黙った後で、言い出す。

「……ワザと枯れようとしてる桜に養分をあげて、さっさと枯れる」

「何ソレ」

 くすくすと笑う彼女の声を聞きながら『さっさと枯れる』と答えた彼女は頭に右手の甲を当てる。

「アタシも見たくないからね、アンタの老いた所は」

 言えない言葉を飲み込みながら、空を舞う桜に、この瞬間の永遠と、死を願った。


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