膝にキスして

 知名がバレー部での練習後、片付けを終えて更衣室に戻ると、眞美が体操着のままで、お茶を飲んでゆっくりとしていた。

「お疲れ、知名」

「眞美、待っててくれたの?」

 その返事の変わりに、眞美は知名の唇に自分の唇を重ねた。

 運動後の火照りが冷め始めていた体に、また新しい火が入った。

 眞美が舌を絡ませ始めた瞬間に、知名はスッ……と唇を離した。

「ここはまだ学校です」

 頬を真っ赤にして、呼吸を荒くしながら、知名がそう言って眞美を制した。

「じゃ、唇のキスはやめにしよっか」

「いや、別に嫌ってわけじゃなくて……」

 眞美が笑顔でキスを止めると言ったせいで、知名は不安になった。

 ただ場所を選んでほしいだけで、見つからない場所ならどこにでもキスしてもいいのに。

 眞美は立っている彼女の前に正座をすると、膝にキスをした。

「ひゃぁっ……うっ」

 今まで感じたことのない刺激が、自分の膝から這い上がって来る。くすぐったさの中にほんの少しだけ混ざっている気持ち良さが、脳内で甘く響いた。

 笑う膝を押さえながら、知名は眞美の頭にチョップを降り下ろす。

「ばっ、バカッ!変な声出たでしょ!」

 そう抗議すると、眞美は顔に悪い笑みを浮かべた。

「変じゃない……かわいいよ」

 ますます固まっていく知名を眞美は下から見上げながら、自分のパートナーのコロコロした感情変化を楽しんでいた。


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