天井を見つめてる

「ねえ、胸って揉んだら大きくなるって聞いたんだけど」

 昼休み、口にウインナーを運びかけた涼子は、そのまま停止した。

 バカ正直……ではなく、正にバカな美智子が箸に挟まれているウインナーを指で摘み、掴んでいた箸から取り上げ、自分の口に放り込んだ。

「……急に何を言い出すの?」

「らっへね」

 口の中に物を入れたまま話そうとする美智子を涼子は睨んだ。

「食べてから話して」

 美智子は喉を鳴らして急いで口の中を飲み込んだ。

「だってさ、私も涼子みたいなでっかい胸が欲しいんだもん!だから聞いたら、揉めば大きくなるって言われたから、本当にそうかな、って思ってさ」

「なるほどね……まあ、その話、嘘では無いと思うわよ」

「ほんと!?じゃあ、涼子揉んでよ!」

「揉める場所無いのに?」

「くっ……今は……今は種蒔きの時期だから……平坦なだけです……種蒔きを……種蒔きをしましょう」

 唇を噛みながら悔しそうにそう言う美智子を、涼子は笑いながら見つめる。自然と出てしまうサディスティックな感情がそんな表情をさせるのだ。

「取敢ず話は最後まで聞いて」

「はいはい」

「私が胸を揉んでもダメなのよ」

「なんで?」

「あれはね、好きな人に揉んでもらうから大きくなるのよ?わかった?」

「え~!?そうなの?」

 口を尖らせながらブーブーと文句を言う美智子の頭を涼子が撫でる。

 そして、美智子が首を傾げながら口を開いた。

「ねえ、涼子」

「なに?」

「考えたんだけど、涼子が胸揉むの、問題無いんじゃない?」

「は?」

「だって、好きな人に揉んでもらえばいいんでしょ?」

 無邪気な顔でそう言ってこちらを見つめる美智子の顔を、涼子は見返すことが出来ず、天井を見つめ、これからどうすればいいのかを考えた。しかし、頭に登って来た熱が、思考能力を奪ってしまい、ただ天井を見ることしかできなかった。


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