正銘証明

食連星

第1話

全民,マイクロチップを埋める事になった.

どこに埋めても良いらしい.

選べるんだって.

ナンバー持つのにも難儀だったのに,

よう思いついたねって感じ.

部位は手の人が多い事.

使いやすいしね.

でも,狙われやすい.


ぐっと抉られるらしい.

穴あきの手になるのも,

空っぽになっていいのかな.


その人にしか使えないって

嘘だったんだ.

だから,世界がぶっ壊れた.

全て紐づいたチップは,

その人の運命を狂わす.


埋めたら最後,

後戻りはできない.

行きはよいよい

よいよいか…

ふんっ

全く良くない.


その前に体鍛えるんだって.

だって,

奪い合いが待ってるから.

無差別格闘.

面白っ.

笑えんじゃん.


20歳から何やってもいいんだって.

お酒も煙草も奪い合いも.

徒党を組むのは自由なんだって.

組織があちこちで出来上がってる.


何処に入ろ.

いいとこもわるいとこも.

あるんだってさ.

守られる要因と

守る要因と.

さて,自分は,

どっちかな.


「青海波!

どこに入るか決めたん?」


「あぁ,七宝.

そんな,どこのゼミに入るか決めた?

みたいに言わんよ.」


「んー,でも

そろそろ決めとかんとヤバくね?」


「うーん.

七宝は決めたん?」


「悩んでる.」


「どことどこ?」


「何で言わないといけないんよ.」


「一緒に入るか,

別にするか…

考えられるけん.」


「何で,そんな

…両極端?

あーあ,一緒に入るっち言ってくれたら,

教えたんに.」


「いっしょにはいるー.

けん教えて?」


「棒読みやめたげて.」


「ばれるんか.」


学生は狙われない事に

表向きなってる.

だから,普通に

IDぶら下げて移動する.

だけど,関係ない奴には

全く関係ないらしい.

もう,よく分かんねぇっす.

だって,もう無法地帯だもん.


幼小から空手はやって来たけど,

はねるものの前には力及ばずだし.

超人じゃないし.

七宝とは小さい頃から一緒.

一緒って語弊.

空手が一緒.

幼小中は違う.

高校から一緒.

空手で入ったから,

空手で,ずっと一緒.


呼吸のタイミングとか,

間合いとか,

技のかけ方とか,

お互い知ってる.

強みも

弱みも.

だから,

読み合うし,

勝とうとすると,

若干,面倒な事になる.

ずっと,

組み合ってる方が楽.

おかしな話だけど.


違うチーム入ったら,

こいつと奪い合うんだろうか.

埋め込まれた小さな小さなチップのために.

馬鹿馬鹿しい.


「なぁ.」


「何?」


「…

飯食ったん?」


「…

それマジで聞きたかった事?」


「ははっ言うねー.

違うけど,今はいいや.」


「…そっか.

まだだけど.学食行く?」


「そうすっかー.

あぁ,財布置いてきたかも.」


「不用心やなっ.戻る?」


「あんま入ってないけんなー.

貸す?」


「貸したくねー.

お前,あん時のまだやん.」






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