睦月班長の午後は妙に騒がしい
暗黒星雲
第1話 密告と装甲車
いつものように何も起きない昼休みだ。俺はぼんやりと地底湖を眺めていた。
ここは火星。アケローン大地下都市にある地底湖の湖畔だ。何故かこの場所に沿岸警備隊が配置されている。この地底湖は比較的大きく魚貝類の養殖が盛んだ。おかげで時々密漁者が現れるが、その他の事件が発生した事はない。そう、この沿岸警備隊が配置されてからウン十年、事件らしい事件は起きた試しがない。
この沿岸警備隊は暇すぎて、訓練と定時パトロール以外やることがない。それ故ここは湖畔のリゾートと揶揄されている。そんな暇な沿岸警備隊の電話が鳴った。
「はい。沿岸警備隊の
「突然申し訳ありません。湖畔の空き倉庫に武装した装甲車が隠れています。車内に大量の武器弾薬を載せています。先刻、マリネリス市街を襲ったテロリストです」
「君は誰だい? どうしてその情報を知っている?」
「ノエルと言います。私、先ほどマリネリスから避難してきました。宿泊中の旅館の、裏手にある倉庫に装甲車を見つけちゃったんです。番地はKCの556」
「その旅館って雪灯りだね」
「はい、そうです」
「わかった。直ぐに小隊を向かわせる。後で事情を聞かせてもらうよ。危険だから部屋から出ないように」
「わかりました」
マリネリスに武装勢力が潜んでいるという情報があり、治安維持隊がマリネリスに向かっていた。
「西方隊長は? もうマリネリスに?」
「マリネリス市内がテロリストの巣窟だからって。あそこ、警察も治安維持隊も撤収してるっしょ」
「ああ、それで
「ですね。とは言っても、
「あれ? じゃあ戦車いないの? 装甲車相手なのに」
「しゃーないっすよ。バズーカ持ってバギーで出ます。班長は?」
「俺は二輪のスパーダで出る。って、おい。二人かよ」
「本日の勤務は班長以下四名。その内の一人はバイトの慧子ちゃんです。今、昼休憩っすけど……帰って来ないんすよ。風呂にでも入ってるんすかね」
「電話番はAI任せか。気をつけろよ」
「了解」
本日の勤務は第二班だ。班長の俺と
俺は武器庫からアサルトライフルを引っ張り出し、
「急ぐぞ」
「了解」
俺はスパーダのスロットルを捻り車庫から飛び出す。すぐにランチアも続く。現場までは数分で到着した。如月と弥生が乗ったランチアもシャッター前に停まる。
現在は使用されていない空き倉庫だ。俺はアサルトライフルを構え、シャッター脇にある昇降スイッチを確認する。それに触ろうとした瞬間、連続した銃声が響いた。
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