第10話 早紀の告白
翌、日曜日。
バイト中の美雪は、朝から上機嫌。慎也を見ては、顔を赤らめている。非常に可愛らしい「女の子♡」状態…。
妾になることは決まったが、まだ、何時からというのは決まっていない。
美雪は、多分、早紀の父親との話が着いてから一緒にということになるのだろうと、勝手に考えていた。
その早紀からは、今日のバイト終わりに慎也宅に同行して欲しいと頼まれていた。
早紀も自分のことで話が有るようだが、この前の話では、彼女の方は全く問題ない様子。
いつから一緒になれるのだろうと完全に浮かれ気味の美雪は、早紀がポーカーファイスで隠している緊張と不安に気付けなかった。いつもなら、何か感づいたかもしれないが…。
一方、舞衣は、早紀の不安気な様子に気付いていた。が、同時に早紀も舞衣を警戒していた。
「舞衣さん!心を読むのは反則ですよ。今日の夕方、全て話しますから、それまで待っててくださいね」
早紀の方から先に、釘を刺されてしまっている。それに、あと数時間で話してくれるということ。別に自分だけフライングする必要も無い…。
そう思い、早紀の心を
夕刻、神社を閉めて、皆で慎也宅に向かう。
早紀が通されたのは、母屋の広間。
慎也・舞衣・祥子が上座に、向かい合って早紀と美雪の五人だ。身内のことなので、机もお茶も出していない。
早紀が、相談があると言って作らせた会合の場。皆、早紀が口を開くのを待っていた。
その早紀は、
慎也も舞衣も、首を
「あ、あの早紀ちゃん?」
慎也の呼びかけを合図にしたように、早紀が立ち上がった。
そして、やおら、服を脱ぎ始めたのだ!
「な、なに、早紀!どうしたの!」
隣の美雪が大
慎也、舞衣、祥子は、その半裸の早紀をジッと見詰める。早紀の真剣な目。なにか、考えがあってしているのに違いない。
隣にいる美雪だけがオロオロしていた。
美雪も、早紀の完全な上半身裸を見たのは初めて。下着姿までしか見たことは無かった。
見上げる乳房は、ツンと上を向いた張りのある良い形で、結構ボリュームもある。ウエストは引き締まっていて、かなりのプロポーション。貧乳幼児体型の自分とは全く違う、女性らしい体つきだ。
早紀はスカートにも手を掛ける。
そして、最後に残ったショーツにも…。
「あっ!」
早紀がショーツを下した瞬間、美雪は思わず声を上げてしまった。
早紀の股間には…。
あるはずの無いモノが、ぶら下がっていた…。
正面から見ている上座の三人も、目を見開いている。
ショーツを脱ぎ捨て、全裸になって、早紀は真っ直ぐ慎也の方を向いて、立った。
美雪は…。
自分のすぐ横に立つ早紀の股間のモノに、頭がクラクラするのを感じた。
視線を上に向け、改めて早紀の胸を見直す…。
豊かな、形の良い乳房。
視線を下げて行く…。ウエストはキュッとくびれ、そこからのヒップの線は、柔らかな曲線。女性そのもの。
でも…。
………
この股間にぶら下がっているモノは何?
まるで、男性の…。
あ、あれ?でも、男性だったらあるはずの、オチンチンの左右の物は無い。それに割れ目が見える。
そうだ、早紀はちゃんと生理もあるはず。生理用品も一緒に買いに行っている…。
もう、何が何だか、分からない!
………
「みなさん、ごめんなさい。私には隠している秘密がありました。それが、これです!」
早紀は全裸で立ったまま、
「私には生理もあります。だから女で間違いないと思います。
でも、こんなものが付いているんです。おしっこも、この先から出ます。男性のモノと同じみたいです」
慎也は、ジッと早紀の股間を見詰める。
「隠していてごめんなさい!嫌ですよね。こんな変な体。
普通の結婚は望めない体です。恋愛や結婚に願望があっても、許されない…。中途半端で、多分、子供も産めません。私と一緒になってしまった人は、自分の子を望めない…。
結婚なんて、私は出来ないと思っていました。でも、皆さんの、あの素敵な関係に、私は
ここなら…。宮司さんなら…。皆さんなら…。私も受け入れて
でも、やっぱり、ダメですよね…。こんな体、気持ち悪いですよね…」
早紀の両目から、涙が
慎也は立ち上がって早紀のところへ行き、早紀の脱ぎ捨てた洋服を彼女の肩にかけた。
そして、その場に坐らせ、自分も早紀の真正面に坐った。
「大丈夫。気持ち悪くなんか無い。早紀ちゃんが俺たち家族に加わりたいと言うんであれば、それで良いし、俺は受け入れる。
いや、早紀ちゃんは、もう既に、この家族の一員だよ。
それに、ここなら子供を産むことに
慎也は、両手で早紀を優しく抱き、背中をポンポンと軽く叩く。
「早紀ちゃん。ずっと苦しんでいたんだね。大丈夫だよ。大丈夫」
美雪も理解した。早紀が自分の前に立たなくなったのは、これが理由だったのだと。
美雪が獲得した透視の力で、この秘密がバレてしまうということを恐れていたのだ。
「早紀~! こんなの、何でもないよ。早紀は女の子だよ!」
慎也と入れ替わりに、美雪も早紀に抱き着いた。
「私も気持ち悪いなんて思わないよ、早紀ちゃん。大丈夫よ。問題無いわ」
舞衣も、優しい笑顔を向ける。
「じゃ、じゃあ、私も妾にして
「あ、あの、早紀ちゃん。それは大丈夫だから。
だけどね、この間から思っていたんだけど、俺としては、あまり『妾』を強調しないで欲しいなあ。
せめて『八号さん』くらいにしといてよ。美雪ちゃんが『七号さん』だから…」
妾も、八号さんも、世間体の悪い言葉には違いない、いや、むしろ、八号さんの方が、かなり
笑顔での慎也からの言葉に、早紀は声を上げて泣き出した。そして、再度しっかりと、慎也にしがみついた。
だが…。
この場で一人、冷静な人物がいた。…祥子である。
「ちょっと待て、ちょっと待てよ。胸はあるし、生理もあるとすると、女の機能はあるようじゃな。
なら、男の機能の方は、どうなっておるのじゃ? 子種は出るのか?
主殿の他は、女ばかりのところじゃ。もし、子種が出るとなると、問題あるのでは無いかのう」
皆が見落としている、もしくは、敢えて考えないようにしていた、重要な問題点の指摘。
確かに、これは感情だけでは済まされないこと。子種、つまり「精子」が出るとすれば…。
舞衣も、指摘されてしまうと無視は出来ない。ここに居るメンバーならば、早紀に男の機能があったとしても、間違いを犯すことは無いだろう。しかし……
「そう言われると、そうなのよね。あの、レズ双子が、そのうち帰って来るかもしれないし…」
そう。舞衣が思い浮かべたのは、杏奈と環奈。
舞衣は、この二人にレズの相手を一度させられているのだ。女の子であるからこそ、二人の恰好の餌食になる恐れがある。早紀より年下であっても、妾としては向こうが先輩。おまけに二対一だ。
結果、二人が早紀の子を妊娠などとなれば、非常に、ややこしいことになる。
「じゃ、じゃあ、もし、私に男としての機能もあることが分かったら…」
早紀の顔が、スーッと青ざめた。
「大丈夫だよ。その時は、その時で方法を考えようよ」
これ以上、早紀を不安定状態にさせて置きたくなく、慎也は早紀の髪を撫でながら答えた。
受精させる機能があったならという仮定のことであり、無ければ問題ない事である。タマが見当たらないのだから、普通に考えれば大丈夫だろう。
それに、あの双子は、今は居ないのだ。双子のことは、帰ってくることになった時に考えても良い。
「お、お願いします。もし、両方の機能があるのなら、男の方は手術で取っても構いませんので! 私には、ここしかないんです!」
「わかったよ、早紀ちゃん。大丈夫。心配しないで」
必死になっている早紀をとにかく落ち着かせ、美雪に手伝わせて服を着せた。
その後の相談で、早紀の体については、折を見て亜希子のところへ行って診察してもらうことにした。男性の機能もあるのであれば、亜希子も交えて良い方法を考えればよい。
ということで、早紀の仲間入りに関しては、このメンバー間では、めでたく承認と相成ったのだった。
ホッとした早紀は、父との電話のことも、皆に話した。
先方の希望通り、今月二十九日に、慎也宅で顔合わせをするということに決め、早紀はその晩、父に連絡をした。
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