第20話 吉川との真面目な会話
後日、たまたま学校に行った日に
要するにほぼ無視。
大岡部に堂々と話しかけれる陽キャの
桃山や
しかし、よく考えるとこの契約、カノジョをつくるというギャルゲーの目的に対して相性悪くない?
それとも、彼女のフリを続けているうちに本物のカップルになってしまう的なやつなのだろうか。
いや、そもそもあのゲームを攻略するか……つまり、この三人の誰かと結ばれることを目指すかどうかの踏ん切りが未だにつかない。
大岡部が断言していた桃山との関係も別に進展しているわけではない。
あれから学校に通う度に絡んでくる頻度が増えたし、放課後たまにゲームとかをするようにはなったが、明確に付き合うとかそういう話はしていない。
こっちから押していけば何か変化が生まれるのかもしれないが、やっぱり勇気がない。
勇気がない、はちょっと違うな。
もっと正確に言えば、そんな重大な決断を独断で進めてもいいのかどうか悩んでいる、と言い換えるべきか。
自分の好きなジャンルでは自分で考えて動けるが、縁遠いジャンルで、しかも人命が懸かっていることに対しては完全に指示待ち人間と化している。
どうせゲームの方でも最終的には俺が決めなければならなかったのだが、ゲームの選択肢をクリックするのと、リアルな世界で色々準備して行動するのでは肉体的・精神的負担が全然違う。
普通の人ならその時の気分と自分の好みで相手を選んで行動すればいいのだろうが、中途半端に子どもの知識がある自分としては、そっちも思考に絡んでくる。
問題はそれだけではない。結局、誰を選べばどの娘に繋がるのか確定していないのもどうにかしたいところだ。
逆に言えば、そこが分からない以上、子どもを軸に考えるのはやめて目の前のヒロインにだけ集中しておけばいいという結論に引っ張っていくこともできる。ヒロインの誰かと結婚して子どもができれば、どの娘が生まれるかは確率の問題だ。
排出率は脅威の三分の一(約三十三%)だから、その辺のソシャゲに比べれば良心的という次元ではない。
ソシャゲでガチャを引く感覚でいくと、三十三%は掴み放題と言っても過言では……。
ソシャゲガチャを例に考え始めて、このガチャのヤバい欠陥に気付いてしまう。
あいつらって母親に関する記憶に欠落があったらしいが、他の記憶が完全に無事という保証はない。
もしも、兄弟姉妹に関する記憶も欠落していたとしたら。
もしも、あいつらが三姉妹だったり、あいつらの一部が姉妹だったりしたら。
その場合、誰か一人とカップルになって攻略した気になったとしても、あの三人が誰も生き返らない可能性がある。
あいつら、外見や性格はあまり似ていなかったが、ほぼ初対面のはずなのに意外と仲良く協力する場面もそれなりにあったじゃないか。俺に隠れて何か結託していたようだったし。
娘が誰も生き返らないカノジョのルートに入ったとしたら、ギャルゲー的には一応クリアとなるかもしれないが、俺と娘の生き残りをかけたゲームとしては実質バッドエンド。
意外な展開という一点において一種の撮れ高にはなるかもしれないが、ゲーム実況者としては名折れである。
兄弟姉妹の件ぐらいは確かめたいが、未だに戻り方が分からない。
また死ぬのは嫌だしなぁ。マジどうすっかな。
そういう思考を巡らせながら、未だに爆発的に伸びる気配がないゲーム実況をメインに日々を過ごしていると、いつのまにか学園祭が終わっていた。
二年生の中では近付いてきた修学旅行についての話題が増えていた。
修学旅行がいくらビッグイベントだと言っても、俺にとっては出席日数の問題でしかない
むしろ実況者バレのリスクを背負って修学旅行中にゲーム実況するわけにもいかないため、普通の授業日に比べてアドがないとさえ言える。
行くかどうかが既に大きな問題なのだ。
俺の親は優しいので恐らく修学旅行用のお金を納めているだろうが、休まずいくかどうかは別問題だ。たぶん行かなくても怒られはしないだろう。
これからの計画を考えつつ、授業を聞き流し、放課後。
荷物をまとめていると、吉川さんに声を掛けられた。
実はこっちの世界に戻ってきてから吉川と話す機会はあまりなかったため、意外だった。
「
ゲーム内でもメガネの奥があまり見えなかったのだが、こっちでも相変わらずあまり確認できない。
「構わないけど、何か用か?」
「はい。最近休みがちでしたので、その辺の絡みで先生から幾つか用を頼まれまして」
先生が直接言えばいいとは思うのだが、真面目で大人しそうだからそういう仕事を押し付けられるのかもしれない。
「おっす、だーろくパイセン! 今日はどうする?」
桃山が教室に乗り込んできた。最近は学校行くたびに大体こういう感じなので予想できていたが、今日はさすがに吉川の予定を優先するべきだろう。
「申し訳ないが吉川さんに頼まれた予定が先に入ったから……」
桃山が身体の向きを変える。
「ヨッシー、どうなん? あたしがいてもオッケー?」
数秒考える素振りを見せ、
「申し訳ないですけど、今日は真面目な話ですので」
「んー、そっか。まあ普段控えめなヨッシーのお願いだから無下にはできないなぁ。じゃあね、パイセン」
「お、おう」
真面目な話って、俺が休んでいる間にそんなに大変な問題が起きていたのだろうか。
荷物をまとめた吉川の後に続いて近くのコーヒーチェーン店に移動した。
吉川との会話イベントといえば図書館というイメージがあったので何だか新鮮だ。
注文を済ませ、席について早速切り出す。
「んで、先生からの頼まれ事ってのは?」
吉川が一度俯き、
「実は、特に何も頼まれていなくて」
「そうなの? まあいいけど」
ホッとしながら顔を上げた。
「いいのですか? 騙すような真似をしてしまったのですが」
「別に怒ったりしないから気にするなって。そういうことをしてまで呼び出した理由の方が気になるだけだし」
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