別れ
彼女——
「もしかしてプロポーズかっ!?」
「いやいや、まだ19歳だぞ」
と、必死に脳内会議をしていたため、紫恩に肩を叩かれるまで気付かなかった。
「美琴、どうしたの? 一人で考えこんじゃって」
と紫恩は笑ったが、俺にはその笑顔が作り笑いにしか思えなかった。
「いや、別に大したことじゃない。で、何? その話ってのは」
俺は一瞬よぎった不安を紛らわすように聞いた。
「あ、あの……実はね……」
紫恩はベンチにも座らず話をしようとするので、
「座らないのか?」
と言ったが紫恩は、
「あ、ううん。大丈夫……」
そして少し間をおき、
「すぐ、済むから」
と言った。
俺はさっき紛らわせた不安がどっとこみ上げてくるのを抑えられなかった。
「あの……私達、別れよう」
唐突に言った紫恩の言葉に俺はガツンと頭を殴られたような衝撃が走った。
「なんでっ……なんで急にっ!」
俺は思わず立ち上がり、紫恩を見つめた。
「実は、美琴より良い人をみつけたの。それで、今度、その人と結婚することになったの」
頭が真っ白になった。
「じゃあ、俺はもういらないって事だよな」
「そうだけど?」
もう完全に俺の頭はフリーズしてしまい、
「そんなに、良い男なのか」
と、バカな質問をしてしまった。
「とても良い人だよ。美琴とは比べものにならないくらい」
もう、言葉もでなかった。
ただ、紫恩に捨てられたという事実が胸にぽつんと浮かんでいるようだった。
「じゃあ私、もう行くから」
何も、言えなかった。
「 」
紫恩が何か言った気がした。
でも俺は、立ち去っていく紫恩をただ呆然と見ている事しかできなかった。
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