ただの中学生な俺が宇宙冒険者の船に乗ってしまった件。地球人で初めて光速を突破しそうです。

@spring9

第1話 緊迫!謎の彗星現る

銀河系オリオン腕外縁部太陽系地球:日本国東京都某所高校

地球日本標準時:2028/10/13-11:50


もし、気軽に宇宙を行き来できるようになったら。人々の生活圏が地球を飛び出した世界だったら。そして、冒険の果てに未開拓の星や異星人の遺跡なんかを見つけることができたら。そんなSFチックな妄想をするのは中二を通り越しても好きだ。


当然、そんな創作世界が訪れることなんてほぼないことも今では理解してるが、やっぱり心のどこかではそれを期待していた。

とはいえ、仮に非日常が起きるとしてもそれが今日である確率は極めて低い。ならば今は科学的にいろいろ思案してみたりする。


「星間文明と言っても星系内から出るかどうかでだいぶ違うな、、」


今は授業中だというのに、気が付けば俺の思考は全く関係ないところに向かっていた。


キーンコーンカーンコーン


「よし、それじゃあ教科書の、、46ページの問題、これを来週までにやってくるように。じゃあなー」


軽いノリと派手なアロハシャツを着た鹿山先生が部屋を出ていく。


「おい、ソラ。今日カラオケ行かね?」


ソラというのは俺のこと、話しかけてきたのは大介だ。後ろには五郎と有紀がいる。


「お、いいね。ちょっと歌ってみたい曲があったんだよ」


「『半端ならマーチ~♪』、か?」


「お、よくわかったな、行こうぜ。午後休サイコー!!」




日本国防衛省宇宙作戦隊一室

JST:2028/10/13-16:20


「おい、こりゃなんだ」


男が部下のコンピュータ画面をのぞき込む。


「わかりません、数分前から見えだして、、今いろいろ調べてます」


「、、念のためイエローアラートだ。全員解析にかかれ」


「「「はい」」」


「室長、ペンタゴンに問い合わせましたが向こうも調査中とのことです。」


「自然現象だったとしても、そうでなかったとしてもコトだ。中国、ロシア、インド、EUにも確認を取れ」


「ダメです、どこも調査中です。」


「2号機の視界に入りました、間もなく詳細観測ができると思います。」


「よし、JAXAと各地の天文台にも協力を要請しろ」


「解析完了しました。こ、これは、、とんでもない速度です!」


「なんだと?彗星かなにかか?なぜ突然見えだした」


「わかりません。相対速度300km/s、距離約1200万キロ、対象の大きさは最大で約2500メートル。」


「軌道予測を出せ、大至急だ!!よもや衝突なんて起きたら、、」


その言葉で部屋の中は緊張に包まれる。全員が背中に冷たい汗がつたうのを感じたのだった。



アメリカ合衆国ペンタゴン一室

JST:2028/10/13-17:10


「なんだと?!本当かそれは!」


「ええ、衝突は避けられないかと、、到達予想時刻は10時間後です。」


「敵国の攻撃である可能性は」


「まさか、ありえません。0.1AUも離れた軌道から2500mもの物体を、、」


「ではなぜ突然現れた。少なくとも我が国だけでなく日本とEU、そしてインドもこれまで全く気が付かなかったのだぞ。」


「チーフ、異星人という可能性は」


「バカな!それこそありえな、、いや、確かにありえないとは言い切れないが、、そんな映画みたいなこと」


「とにかく危険です。直ちにこの事実を公表して少しでも避難を」


「まて、2500mの隕石が落ちてくると全世界に発信するのか?どんな混乱になるかわからないわけではあるまい」


「ですが、、!」


「まずは情報を集める。軌道の再計算、そして様々なパターンでの被害予測。それと、、衛星ミサイルの準備を要請しろ」


部屋はより一層あわただしくなる。だが、この時点で事の重大さを身をもって実感している人間はほとんどいなかった。





日本国首相官邸内

JST:2028/10/13-18:40


「公表すべきです!少しでも多くの国民を救うには、、」


「バカ言うな!このタイミングで開示しても混乱を招くだけだ。それに時間が足らなさぎる」


「ではその時まで何もしないというのですか!!」


「いや、しかしな、、」


「対象を破壊するという線は」


「無理だ。現状我が国は宇宙空間に対する破壊方法を持たない。ペンタゴンが試みるそうだが、対象が大きすぎる。うまくいくとは、、」


「そんな、、もう、どうしようもないのですか」


「「、、、、」」


部屋に沈黙が訪れる。


「そうだ」


総理は重々しく答えた。全員があまりの急展開に感情は追い付いていなかった。




東京都内某所ソラ自宅

JST:2028/10/13-19:00


「ただいまー」


カラオケから帰った俺が家に着くころには日はとっぷり暮れていた。


「ソラ、帰ったの?ちょっとテレビみなよ、大変だよ〜」


『繰り返します。さきほどアメリカ政府から緊急発表が行われました。最大径2500mの巨大隕石が地球へ向かっているとのことで、衝突は避けられない模様です。これをうけて日本政府も緊急会見を行いましたが、いまだ具体的措置のめどは全く立っていない模様です。衝突予想時刻は明朝3時27分。これをご覧になっている方は直ちにシェルターや地下フロアのある建物などに避難してください。繰り返します、、』


「え、、いや、え?どういうこと?大変どこの騒ぎじゃないじゃん」


「まあそうね、でも慌てたってしょうがないでしょ。今二階でお父さんが避難の準備してるから一応ソラもやっときなさーい」


「い、一応って、、あ、ああ」


あまりに急な出来事に全く頭が追い付かない俺はあっけらかんとしながら自分の部屋へと向かう。何やらガサゴソと音がするので部屋をのぞいてみると、父がいろいろなものをトランクに詰めていた。


「おう、ソラ。なにやら大変なことになったな。」


父さんは何とも間延びした声で言う。


「だからなんでそんなに呑気なんだよ、、大惨事じゃん」


「まあまあ。もし本当に隕石が落ちてきたら僕たちは一瞬で死んじまうわけだし、逆に何も起くても多分会社が休みに、、ゴホン!いや不謹慎だったな」


「やれやれ、このマイペース両親は、、」


俺はため息をつきながら自分の部屋へと向かった。




日本国防衛省宇宙作戦隊一室

JST:2028/10/14-0:50


「室長!対象が減速を始めました!」


「何?!どういうことだ、、表面からガスでも噴出したか?」


「わかりません、、現在距離約300万キロ、相対速度270km/s、1.2Gで減速しています。」


「うーむわからん、とにかく避難は続けなければ。いくら減速しても地球に落ちるだけで人類史上最悪の災害だ。時機を見てここの機能も地下シェルターに移行するよう指令が来ている。」


「しかし、もっと大パニックになると思ったのですが、、」


「いや、みなパニックになる余裕がないんだろう。実感が湧かないというのが正直なところだろうな。」


「確かに。いきなり数時間後に地球が滅ぶなんて、嘘だと信じたいですよ。俺だって、、」


「とにかく、やれるだけのことはやろう。」


「そうですね」



「彗星」の出現からたった数時間で町が、国が、そして全世界が大混乱に陥った。だがこの時、地球史上類を見ないほどの歴史的瞬間がそばまで来ていた。

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