第3話 安堵感

相談しようと思ったことはあった。数え切れないほどに・・・とはいわないが。


僕は死体が見えない。


そんなことを一体誰が信じるだろうか?


『頭のおかしい奴』


そう思われたくなかった。何より両親に心配をかけたくなかった。

それに別段、死体を見れないことが困るかと言われればそういうことはなかった。

食べ物も死体で出来ているのが大半であるが、不思議とそれは問題なく食べれた。

原型を留めていなければ、ぼやけこそすれど認識はできたからだ。

魚や貝、カニなど、食べる際にある程度の原型があるものは限りなく見えなかったが、コツさえつかめば綺麗に食べることが出来た。


―――小学生時代は問題なく過ごせた。

では中学生時代はどうだったかというと・・・何も問題なかった。

死体鑑賞研究のために、漫画や映画はよく見ていたが、周囲の友人にはそれを表には見せなかった。

その時は特に理由はないつもりであったが、今思い返せば、


『一緒に見ようぜ!』


の一言が怖かったのかもしれない。

問題ないとはいえ、やはり自分が人とは違うということを都度、認識することが怖く、恐ろしいと感じていたのだろう。

一人で見れば感想会は無い。自分と他人の違いを感じ取れることは無い。

その安堵感を汚されたくなかったに違いない。

そういう風に僕は中学時代を思い返している。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る