5日目

 今日はずっと点滴をうってもらい、安静にしていました。暇でした。

 一昨日から体調が悪く、昨日は文章を書ける状態ではありませんでした。今日は少しましになったので、少しだけ書きます。

 体調が悪いと点滴を打ってもらうのですが、これだけ入院していると、注射器を持つ看護士さんと仲良くなります。今日もその一人と少しだけ話しました。以下は会話の内容です。

「死にそう」

「大丈夫。点滴打って、治るから」

「死にそう」

「死なないよ」

「やまさん」

 やまさんはその看護士のあだ名です。やまさんは三十代で子持ちで目力が強い人です。

「最近子どもは?」

「家で暴れてる」

「いいなー」

「なにが?」

「僕も暴れたい」

 そう言うとわあっははと彼女は笑いました。こういう話題でも笑ってくれるのが好きです。

「いつでも暴れていいよ。そんときは息子みたいにお尻叩いたげる」

 彼女はそういって、注射針を僕の腕に刺しました。

 もう、何かに歯向かう力を僕は持っていません。だから羨ましいんです。自分のやりたいことをやっている人や、押し付けられたものに抵抗する人たちが。僕も、昔は抵抗してました。でも病気は表には出てこないし、心でどうにかなるものでもないので、僕は抵抗をやめました。

 本当は今でも、暴れたいんです。

 外に出て、盗んだバイクで走り出したい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る