ロード・トゥ・エリュシオン ~ マラヲタの幼なじみに拉致・監禁されてマーラーの音楽をひたすら聴かされつづける話

朽木桜斎

俺は幼なじみから家に誘われる

公平こうへい、このあとわたしんち、来ない?」


 放課後、高校の帰宅中、幼なじみの速水千夏はやみ ちなつは、唐突にそう提案した。


「え、いいの?」


 俺、国松公平くにまつ こうへいは、彼女のことが好きである。


 ずっと隠してきたことではあるが。


「おじさんとおばさんは来週まで帰ってこないんでしょ? こっちもパパとママはしばらく演奏旅行だし、どう?」


 千夏の両親は音楽家だ。


 けっこう有名らしくて、俺らが小さいころから、仕事で家を留守にするなんて当たり前だった。


 俺の両親も仕事人間だから、お互いの家を行き来して遊ぶのも、珍しくなんてなかった。


「そういえば、この間の模試の結果、千夏に見てもらいたいと思ってたんだ」


「お、いいよ~。じゃあ、着替えたら、うち来てくれる?」


「おお、飯はどうする?」


「用意しておきますって~」


「千夏は料理もうまいからな~」


「持ち上げちゃってえ、なんかヘンなこと、考えてんじゃない?」


「おいおい、勘弁してくれよ~」


「ま、いいよ。じゃ、待ってるからね~」


「うぃ~」


 気がつくはずなどなかった、ヘンなことを考えていたのは、彼女のほうだったということを――

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