第40話 死にたい私と命日

 テスト四日目は昨日休んだおかげか体調も回復した。その結果いつものように……いや、いつも以上のパフォーマンスを発揮することに成功した思う。もしかしたら三教科とも満点を取れているかもしれない。


 仮に取れていなかったとしても九十点後半は取れているはずだ。これで三日目のテストのミスを取り返せたらいいのだが。


 そんな私は家に帰らず寄り道をしていた。


「久しぶり、涼香すずか


 今日は十二月五日、涼香すずかの命日だ。


 この日は仕事で県外に行ってるお父さんも無理してお墓参りに来てくれる。供えられたお花を見る限り私より先に来たようで、赤色のカーネーションが供えられていた。いつもは夕方頃に来ているのに、珍しい。


 私は買ってきた白い菊を空いているスペースに挿すと線香を供える。


「最近思うんだ。涼香すずかってなんでも一位で、人気者で、明るくて、期待されて。もしかして涼香すずかでも期待の重圧に苦しんでたことがあったのかな。自分の地位を守るために私にも隠れて努力してたのかなって」


 まるで答えるような優しい風が私の頬を撫でる。


「そういえば、今日は昨日の体調が嘘のように調子がよかったんだよね。涼香すずかが助けてくれた……なんて考えるのはおかしいかな。夢見すぎだよね。でも私は大丈夫だからお母さんも守ってほしいな、なんて。あはは……」


 声に出すと恥ずかしくて誤魔化すように笑ってしまう。


 何もせずに話すのはただ独り言を言っているみたいで照れ臭い。草抜きをしようと下を見るが、なぜかいつも生えているはずの雑草が見当たらなかった。


「あれ、これもお父さんがしてくれたのかな」


 いつも私がしていたのだが、今回はお父さんがしてくれたらしい。嬉しいことだけどこれだと話せることも話せない。つい周囲を確認してしまう。


「ははは、どうしようか。このまま話すのはおかしいと思う?」


 涼香すずかならなんて返してくれるだろうか。涼香すずかはいつも私の味方だった。そんな涼香すずかなら「おかしくない」って言ってくれるだろうか。それとも「早く家に帰って勉強したら?」と私のための提案をするだろうか。


 涼香すずかならどちらともあり得そうだ。


「それじゃあ、今日はもう帰るね。明日の勉強もしないといけないし。お母さんのこと、ちゃんと見てあげてよ。また来るね」

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