第41話 死にたい私とテスト最終日
テスト終了を知らせるチャイムが鳴る。
「んーーーー、終わったぁぁぁぁ‼」
それとほぼ同時に
今回の私は非常に複雑な心境だった。
はっきり言って四、五日目のテストは調子が良かった。だけど序盤の一から三日目のテスト、特に三日目のテストは内容すら覚えていない。こんな調子で一位は取れたのだろうか。
分からない。取れた気もするし、取れなかった気もする。悪い点数にはなってないはずだが一位を取れたかと聞かれれば怪しい。
「す~ず~ね~ちゃん!」
そんな私の肩に
「どうしたの? 声色的に今回も点数良かった?」
「あーあー、聞こえなーい」
テストの話題を出せば両耳に手を当てて聞きたくないとアピールされる。つまり前ほどの点数ではなかったのだろう。
「もうテストの話はどうでもいいんだよ! 考えるだけ無駄だって。そんなことよりこれからの明るい時間について考えるべきなのだよっ!」
「明るい時間ね……」
「そうそう! テストが終われば午前中授業で遊び放題! それが終われば冬休みに入って、クリスマス! お正月! こたつでみかん~」
目を輝かさせながら雫ちゃんが語る。
「あ、でも補講は大丈夫そう? いつも英語がギリギリのラインだけど」
「もう! どうして勉強のこと考えちゃうかなぁ。寛大な心を持つあたしでも怒るときは怒るよ!」
「ご、ごめん」
「それじゃ、そういうことだから帰りに『フォレスト』でご飯食べようね」
そう言い残して
……何がどういうことでそういうことなんだろうか。陽キャの思考回路はよく分からない。そういえば
そうして放課後になり、
「えっと、『CLOSED』ってなってるけど?」
「大丈夫だって。ちゃんと中にマスターさんいるから」
「あ、えっと閉店中なのにすみません!」
「閉店中? あぁ、今日のお昼は貸し切りだから『CLOSED』にしてるんだよ」
貸し切りにしてるって、もしかしてその相手が私たち?
「それと三人ともテストお疲れ様! そんな三人には好きなメニューをご馳走するよ」
「マスターさんの太っ腹ぁ!」
「毎度のことながらありがとうございます」
二人は何も気にせずカウンター席に座る。だけど私はどうすればいいか分からずその場に残っていた。
「いや、流石に奢られるのは……」
「いいってことよ。僕はこの店のマスターだからね」
「それでもここはお店ですし」
「なぁ
「いやまぁ、これが普通だと思いますよ。俺もマスター以外から急に好きなものご馳走してやるって言われたら抵抗します」
「そういうものなのか。僕は存分に甘えるタイプの人間だからなぁ」
髪の毛を掻いて考えるマスターさんだが、何か思いついたのか私に目線を向けた。
「そうだ、テストが終わったってことはもう冬休みに入るんだよね?」
「まだ午前中授業が一週間ぐらい残っていますけど、それが終われば冬休みです」
「それなら、うちでバイトするなんてどうだい?」
「バイト……ですか?」
あまり実感が湧かずオウム返ししてしまう。
「そう、バイト。
「いや、えっと、バイトをするのと今食べさせてもらうのは話が違う気が……」
「あはは、何を言っているんだい。君がバイトしてくれるなら賄いを出せるんだよ」
賄い。確か従業員に食事を提供するシステムだっけ?
「それってサービスというか、不利益しか生みませんか?」
要するに奢りを言い換えた言葉だ。食べた分だけ不利益が生まれてしまう。
「そんなことないよ。賄いはフードロスを抑えられるし、従業員のモチベーションにも繋がるからね。ほら、あと少し頑張れば美味しい料理が待ってる! って思うと仕事もやる気が出るでしょ?」
「まぁ、確かに」
「ということで、
正直、お金に困ったことは一切ない。毎月お父さんが生活費に加え、お小遣いとして少し多めにお金を送ってくれるから。しかも趣味や遊びにお金を使う機会がなかったせいで、今では大量の貯金が残っていた。
だからバイトをする理由はない……ないけど、ここには
チラリと
「……それじゃあ、バイト始めてみます」
「よかった、ここ最近は忙しくて人手が欲しかったんだよ。
「去年に比べて客足も伸びてきてますしね」
「それじゃあ料理でもしますか。みんなどれが食べたい? ほら、
マスターさんの手招きに従ってカウンター席に座った。それぞれの食べたい料理を聞いた後に店の奥へ向かうマスターさん。それを見送り店内を見渡す。
そこで私と
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