第4章
第25話 死にたい私とハロウィン
「トリックオアトリートォ‼」
数日ぶりに登校した私に
「はい、どうぞ」
去年も同じことがあったので、念のために昨日作ってきた市松模様のクッキーを取り出す。
「これ手作り?」
「うん、あまり秋っぽくないけど許してね」
「
この笑顔を見ることができたので十分作った甲斐があった。また来年も作っておこう。
「ねね、
「あ、くれるんだ。トリックオアトリート」
こうやってお菓子を交換し合う人を今日は何人も見た。
「あはは、実は今お菓子持ってないんだ。だから悪戯されちゃうよ~」
イシシと悪戯っ子のように
それならどうにかして
「さぁて、どんな悪戯されちゃうのかなぁ?」
楽しそうに私の顔を見つめられる。悪戯なんてあまりしたことがないけど、たった一つだけ思いついた。
「じゃあ、はい」
私の悪戯にワクワクしている
「えっと、その手は何? もしかしてカツアゲ⁉」
「そんなわけないでしょ。悪戯よ。い・た・ず・ら」
それでも怪訝そうに私の手を見つめてくる
「――お菓子返して」
「嫌だ!」
即反対されるが私も譲らない。
「でも、悪戯だからなぁ」
「うぅぅ」
私の手とさっき渡したクッキーを交互に見る。その挙動を見ているだけで楽しい。加虐心を掻き立てられるけど、そろそろ罪悪感も湧いてきた。
「嘘だって、悪戯なんてできないよ」
「よ、よかったぁ」
「あ、ちなみにお菓子はちゃんと持ってきたから! お母さんが作ってくれたやつなんだけど」
私の手に小さな袋が置かれる。中にはおばけやジャックオランタンの形をしているクッキーが入ってあった。同じクッキーなのにこれほどの差。圧倒的に料理スキルが違う。
「かわいい……私があげたのと違いすぎて恥ずかしいよ」
「
そこでチャイムが鳴った。授業五分前の予鈴だ。
「そういえば今日の午後は学校残るの?」
「もう私の班はやることがないから残らないかな。それに行かないといけない場所もあるし」
「そっか。じゃあまたね」
ちなみにそれ以外の人たちの明日は一日中暇だ。トランプやスマホで遊んでいる人もいれば、他クラスに遊びに行く人、演劇の練習を見に行く人もいる。
かくいう私は約三日分、合計十七時限分のノートを写す作業で忙しいだろう。それに加えて授業を受けてない分、サイトに投稿されてある勉強解説動画を見る予定だ。
今から考えるだけでも憂鬱になる。これだと演劇の練習も見れなさそうだ。
……見たかったなぁ。
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