第12話 死にたい私と紅葉
そうして迎えた土曜日。私たちはキレイな紅葉が見られる公園まで足を運んでいた。
と言っても遠い場所ではない。
前に見せられた写真ほどではないが、それでも美しい。水面に浮かんでいる紅葉もいい味を出していた。
「あはは、久々に来たなぁ。小学校の頃はここでよく遊んでたよね」
「だな。もう四年も経ってるのに、全然変わってねぇ」
二人は懐かしむように周囲へ視線を向ける。
「それにしてもこんな近場でよかったの? 私からしたら新鮮でも、
「まぁね。でもそれでいいんだよ。こうやって昔を思い出す機会もあんまりないし」
滑り台やブランコで遊んでいる子どもたち。池の周りを歩いている人々。人はいるけど休日のお昼にしては静かだった。
今の時代、外で遊ぶより家の中でゲームが主流なのかもしれない。外は寒いしね。そりゃあ暖かい場所で遊ぶほうがいいか。
「それじゃ、池の周りを一周するよ!」
目を閉じていた
「見終わったらどうするの?」
「今、お母さんがパンプキンタルト焼いてるからそれ食べよ」
「うーん、申し訳ないなぁ」
「えぇ〜じゃあ来てくれないの?」
私の言葉に
私たちの様子を見て相原くんが口を開ける。
「
「そうそう! だから遠慮しないで!」
なるほど。そういう考え方もあるんだ。人の厚意は素直に受け取る……か。覚えておこう。
「分かった。じゃあお邪魔させてもらうね」
「やったー!」
私たちは紅葉の道を歩く。隣には木製のフェンスがあり、その奥に池がある。風が吹けば水面の落ち葉は動き、紅葉は互いに擦れあって音を立てた。
「そういえば、ここに生き物っているの?」
「もちろんいるよ。亀とかメダカとかザリガニとか。向こうに段差になってるコンクリートの場所があるでしょ? 夏場は池の水があそこまで入ってくるから、そこでザリガニ釣りとかしてたんだ」
「スルメイカ使ったら凄く釣りやすいんだよな」
でも、本当にスルメイカなんかで釣れるのかな? それよりどうやって釣るんだろ? 魚みたいにパクって咥え……ないよね?
後で少し調べてみよ。
――ミャー、ミャー
突然どこからか、か弱い猫の鳴き声が耳に入ってきた。周囲を見渡すが見つからない。
「あ、上にいるな」
「た、助けないとっ!」
フェンスに手を必死に手を伸ばす雫ちゃん。だけど残念なことに身長も腕の長さも足りず、届く気配がない。
「流石に
「でも、あの子猫がかわいそうだよ!」
それでも
だけど。
「だったら私がする」
「涼音ちゃん?」
私はフェンスの上へ立つ。上は平らで幅があるし、これでも体感は強いのでなんとかなるだろう。
「
「大丈夫、全然落ちる気配ないし」
「
「ほら、おいで~。怖くないよ~」
目の前で怯えている子猫。しかし少しずつこちらへ足を差し出そうとしている。
「よしよ~し、いい子だね~」
優しい声で子猫に話しかける。やがて踏ん切りがついたのか私に飛び移ってきた!
それを受け止めて抱きかかえる。
「おお‼
「ほんと、見てるこっちがハラハラするな」
「ははは、ごめんなさい」
通路の方へ子猫を着地させて安心し、私も下りようとする――その瞬間だった。
突然これまでにない秋風が吹いてきた。紅葉同士が激しく揺れて音をたてる。体が冷やされ震えてしまう。
そんな風だからこそ、私のバランスを崩すには十分だった。
「――ぁ」
情けない声が漏れて足がフェンスから離れる。目の前の
……が、届かない。
そのまま私の体は二人とは反対方面……つまり池の方へ落ちていった。
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