番外五話 六月十六日

等依とうい先輩、お誕生日おめでとうございます!」


 リビングに彼の姿を見つけて、開口一番に五奇いつきが声をかければ、彼……等依は目を丸くして驚いた。

 自分の誕生日を教えていなかったからだ。


「等依さんにはいつもお世話になっておりますからね! 料理もその他もろもろも奮発したでございますです! はい!」


 すぐ近くから、どこか嬉しそうな空飛あきひの声に続いて、鬼神おにがみの声がキッチンから響いてきた。


「おい、いつまで突っ立ってんだ! はよ座れや!」


 怒鳴る彼女の声に、怒気はない。苦笑いをして道を開ける五奇に、等依は耳打ちで尋ねた。


「……なんで、オレちゃんの誕生日知ってるん?」


 純粋な等依の疑問は、あっさりと解決した。


火雀応鬼かがらのおうき氷鶫轟鬼ひとうのごうきが『今日はあるじの誕生日』って、教えてくれたんですよ? 確か、一週間くらい前じゃなかったかなぁ。最初は身振り手振りだけだから、何を伝えようとしているのかわかんなかったんですけどね……」

 

 そう答えて笑う五奇に、等依は納得した。


「にゃるほどねー。……あの子らにも感謝しないとっスね~!」

 

 朗らかに笑うと、等依はリビングを抜けテーブルに座る。そのタイミングで鬼神が料理を運んできた。


「おい、特製のピザだ! 食え!!」


「鬼神ちゃん……ホント、料理上手っスよね……。っておおーうまそう!」


 出来立ての肉と野菜がゴロゴロ乗ったピザを眺めながら、嬉しそうな等依に鬼神が得意げに鼻を鳴らす。そんな光景を、五奇と空飛は互いに顔を見合わせながら微笑むと自分達も席に着いた。


「それじゃ、改めて等依先輩! 誕生日おめでとうございます!」


 五奇が代表して乾杯の音頭を取り、誕生日パーティが始まった。楽しげな彼らを少し離れたところから二対の鳥……に姿を変化させた火雀と氷鶫が優しいまなざしで見つめていた──。

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