第27話 天ぷらのタレ・インシデント

 2022年になってもなお、未だにおれは「天ぷら」をなんのタレで食べればいいのかわからない。


 「天つゆというものがありまして・・・」と諭す人が居るかと思えば「いや、だったらめんつゆでいいでしょ」「白だしでもいいんじゃね」「俺は抹茶塩」「私は岩塩」「だししょうゆかな」「ソースです」「ものによってはケチャップ」など、内戦がおっぱじまる寸前までカオス化してくる。目玉焼きもタレで揉めることが多いが、天ぷらのタレもなかなか負けてないだろう、と思う。


 天丼なんかであれば、少し甘辛く煮詰めた天つゆや穴子のタレなんかがベストマッチで、逆に塩系だとメシをかき込みづらいといったレギュレーションにおける得手不得手が出てくるが、単品で喫食するとなると、かなり揉める印象がある。


 まあ具材によって塩が合ったり合わなかったりもあるし、逆に「絶対に塩以外は認めない」という素材の旨味論を信奉する派閥もあったりする。基本的には好きなものをつけて食べればいいと思うが、逆にタレで冒険しすぎたせいで本来のおいしさがトーンダウンしたりしてしまうと、それはそれでもったいないな~という感じもする。


 気のおけない友人の場合、基本的にはめんつゆだが、たまに「チーズフォンデュ」につけて食べるというウルトラCをするという。「何らかの天ぷら+チーズフォンデュ」は意外にハズレが少ない組み合わせらしく、ぜひやってみるといいよとオススメはされているが、チーズフォンデュとなかなか関わりが持てない食生活のため、踏み切れていない。家族みんなが天つゆなのに、おれだけチーズフォンデュというのは、流石にカオスすぎないか。


 また「七味マヨネーズ」や「柚子胡椒を溶いためんつゆと大根おろし」などの合わせ技も、割となんでもおいしくできるらしい。天ぷらそのものは淡白な味なので、タレが派手でも問題ないというのは、なんとなくは理解しているが、色々とあるもんだなあと感心することしきりだ。


 これはおれの家だけかもしれないが、子ども用の天ぷらとして、カットした魚肉ソーセージに衣をつけて揚げるというのをよくやる。タレに関しては、しょうゆやめんつゆでもいいが、特にケチャップやソースが合う。これは確かにフリッター的な感じでメシのおかずになるので、必ずしも洋風のタレが合わないというわけではなさそうだ。まあ、もともと天ぷら自体海外の料理ではあるのだが。


 いわゆる「天ぷら屋さん」で天ぷらを食べたことはあまりないが、ああいったところは「天つゆ」か「塩」だったような記憶がある。あちらは揚げたてのいい感じのやつがポンポン出てくるので、タレで奇をてらう必要がないのだろう。実際、揚げたてのいい感じの天ぷらはタレがなんであろうが本当においしいし、タレいらんのでは、という気持ちにさせてくれることもある。特に野菜天が白眉で、揚げたてだと確実に野菜の甘味が主張してくるので、わかりやすくおいしい。


 アジフライにしょうゆをかけるかソースをかけるかで小一時間悩むことでおなじみの知人の場合は「天つゆ」一択だそうだ。厳密には「天ぷらのタレなのだから天つゆ、例外は調理した人からそれ以外のタレを勧められた時だけ」とのことである。まあそうやってガチガチに決めておけば、どんな天ぷらでもそこまで心を乱さずにおいしく食べられそうではある。


 おれは数年前から減塩のための施策として「醤油を極力使わない」というのをやっており、しょうゆが必要な場合は「めんつゆ」「白だし」「ポン酢」のどれかで代用できないかどうか探り、どうしてもダメそうなら醤油を使う、というようにしている。醤油以外を使うと少なくとも塩分濃度は醤油の半分ぐらいになるので、わりと良い減塩になっているのではないかと自分では思っている。


 このスキームに当てはめると、おれ的には、天ぷらは「白だし」か「ポン酢」で食うのが良いという感想になる。めんつゆほど甘みに支配されず、塩ほどエッジの効いた味にならない。その上うまみや風味は増える。おれ的には悪くない選択肢だと思っているが、皆さんはどうだろうか。

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