幻想物語〜冥界王の歩む道〜『記憶を失いし男は残酷だが自由な世界を生き抜く』
大天使アルギュロス
フォレストエリア
第1話 記憶 (1)
俺は瓦礫の中に倒れていた。
なぜ瓦礫の中に倒れていたのかはわからない。
ただ体が妙に重かった。
「あ、アガド君目を覚ましたよ!!」
アガド?
誰かがそう言ったがその言葉には聞き覚えがない。
俺の名前なのか?
俺は状態を起こし周囲を見渡す。
体はなぜだか自由に動かない。
辺りはなにかの建築物があったのか瓦礫の山で埋もれていた。
一面の瓦礫に光るオーブが空中に浮かんでいた。
瓦礫の材質は硬いねずみ色のものだ。
そのねずみ色のものが何なのかとっさに名前が出てこない。
オーブは見たこともない。
だが幻想的だ。
いや、おかしい?!
俺は少し考え気づいた。
俺には記憶がなかった。
直前の記憶、過去の記憶、俺が誰でここが何なのかもわからない。
俺はふと手のひらを見つめる。
「血?」
その血はベットリと俺の手のひらについていた。
少し黒ずんで独特の鉄のような匂いを放っている。
俺は怖くなった。
だがそれを見ないという手段はなかった。
なにせ大きかった。
それはすぐに分かった。
体は強固な鎧に包まれていたがそれを貫き何かが刺さっていた痕があった。
生々しく腹の中身が少し見えている。
「おい。何なんだよ!!」
するとピンク色の髪をした美少女が俺のところに来る。
俺をアガドと呼んだ人物だった。
顔は幼く華奢な体だった。
少女は慌てながらもうひとりの少女を呼んでくる。
「ユウキちゃん!! 待ってください!!」
「だってアガド君の様子が変なの。多分頭を打って」
ピンク色の髪の少美少女はユウキと言うようだ。
俺はそいつに助けを求める。
「おい! なんでもいいからこの傷は何なんだ!! それで何なんだよここ!!」
俺は半分パニックになっていた。
記憶はない、どこかわからないし傷が開いているしこんなの普通じゃない!!
今の俺にはそれだけしか情報がなかった。
するともうひとりの少女が駆けてくる。
アラビアンな服装の褐色の少女だ。
アラビアン?
俺は自分の言葉に疑問を抱く。
これはなんの言語なんだ?
当たり前のように使っていた言語に困惑する。
「アガドさんは回復方法が独特だからえーと」
少女はあたふたしていて苛つく。
「早くしてくれ!! 痛いんだ。体がズキズキする!! 熱もあるし。もう何なんだ!!」
「えー、あ、あ、はい!! 《マナコンバーション》!!」
少女がそう唱えると体の何かが抜けて傷が癒やされてきた。
腹の傷は徐々に消えていき痛みも和らいできた。
これは奇跡か?
目の前で不思議な
「た、助かった」
俺は安堵のため息をつく。
しかしここがどこかわからないのは変わらなかった。
一面に広がるのは
そして上空に次々と光のオーブが上がっていく。
まるで戦場だ。
大きな爆発で破壊されたそんな感じだった。
とにかく聞くしかない。
ここでは彼女がリーダーのようだ。
ユウキという少女は傷ついた戦士たちを運んだり周りに指示を出していた。
俺は肩を叩き話しかける。
「おい。ここはどこなんだ? どうして俺はここにいる? 俺は誰なんだ?!」
俺は質問を投げかける。
この疑問を解決したいばかりに一気に問いかける。
ユウキは目を大きくしていた。
そして腰に差していた剣を抜き放つ。
剣には雷撃が纏っておりなんというか現実離れしている。
「アガド君しゃがんで!!」
俺はその声に従い素早く腰を下げる。
ユウキの声が鋭く耳に響き反射的に動いていた。
すると瓦礫の隙間から黒いジェル状の化け物が襲いかかってきた。
「敵複数!! 囲まれた 援軍は?」
「今向かってるそうです!! ですが爆発に巻き込まれて近くには来ていません」
「クソ。私達だけで戦うしか無いか」
俺は立ち上がり周りを見る。
おいおい。
なんだよこの化け物!!
ジェル状の化け物はけが人を飲み込んでドロドロの体内で人間を溶かしていた。
その様子が生々しく映り脳に残り続ける。
ふと吐き気がして俺は体にあるものすべてを吐き出した。
「アガド君、大丈夫?」
やはり俺はアガドというらしい。
俺は吐くものはすべて出し切りユウキという少女の方を見る。
「お、俺は」
「来た!! マーヤちゃん避けて!!」
アラビアンな服装の少女にそう指示を出す。
褐色の少女はマーヤと言うらしい。
マーヤはジェル状の化け物を避けるが遅い。
このままでは喰われる!!
しかしユウキという少女が素早い突きで化け物の核を捉える。
一突きで化け物は動きを止め光の輝きを放ち姿を消した。
どうやら化け物には弱点があり中心にある丸い紫の玉がそれにあたるらしい。
ユウキは一筋の閃光のように次々と化け物を殺していく。
俺はそれをただ見ていた。
「アガドさん後ろです!!」
マーヤが叫び俺は初めて後ろにいる化け物の存在を認識した。
すると視界に文字が出てくる。
『ベノムスライム』
こいつの名前なのだろうか。
スライム。
妙に馴染みのある名前だ。
いや、そんな事考えているときではない!!
俺は飛びかかるベノムスライムを見てとっさに背中に手が伸びていた。
俺は背中に装備していた大きな大剣を片手で握り大きく上段からの一撃でスライムを粉砕する。
その威力は凄まじく一振りの余波で地面に大きな穴を作り大地に
なんだコレ?
俺は何なんだ?
たったの一撃で地面を破壊して化け物を瞬殺した。
俺は予想外の行動に気が動転しているとユウキが剣を鞘に収めて近づいてくる。
「俺は、誰なんだ? ここはどこなんだ? 教えてくれ、俺は何者なんだ?」
「やっぱりあの時頭をぶつけたのね」
「ぶつけた? 俺はなにかしたのか?」
「アガド君は私達を守って怪我をしたの、多分そのときに記憶をどうにかしたんだわ」
俺は冷静に考えるユウキに腹がたった。
これはわがままだ。
自分でも理解している。
でもこのイライラを止めたかった。
「いいから教えろ!! 俺は誰だ!!」
「アガド君はプレイヤー。この世界『
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