第16話 レリアの、2度目の逆恨み。そして 俯瞰視点(3)
「上は涙とよだれ塗れ。下は」
「尿塗れで、黄色い水たまりができた。この辺でよさそうだな」
「「……ぇ? ぇ…………?」」
さっきまで放たれていた殺気は消え、それぞれの懐へと消えたナイフ。それらを呆然と眺めていたレリアとヤニクは、呆然と目を瞬かせました。
「……ささ、れない……? わたくし、たち、は……。しな、ない……?」
「ど、う、して……? あ、あなた、がたが……。とく、べつに……。みのがして、くださる、のです、か……?」
「俺達は忠誠を誓っていて、独自に動きはしない。シリル様から命じられていたから、そうしただけだ」
移送の途中で森に立ち寄り、軽くお礼をして欲しい――。彼らにはそんな指示が出ていたことを、レリアとヤニクに明かしました。
「シリル様は、お見通しだったんだよ。しばらくしたら、理不尽な復讐を――出所後にどうこうしようと、企み始めるとな」
「「っ!!」」
「そんな懲りない『ゴミ』は、処分するべき。そう思われたそうだが、お前達は殺すより生かす方がいいとも思われるようになった」
「だがそのまま生かしていたら、出所後に復讐を始めるだろ?」
「お前らがシリル様の護りを崩せるわけがないが、それでも周囲が騒がしくなるとベルティーユ様が不快な思いをしてしまう――。そこで、生意気な感情を摘んでおくことにされたんだよ」
ナイフを仕舞った2人は、レリア達の顔面、そして股間を順に指さしました。
レリアとヤニクの心は完全に折れており、本能的に服従をする状態と――これが演技だと気付いてももう、復讐など企めない心理状態となっていました。
シリルは2人を無害化をさせるために、こうしていたのです。
「もうそんな気はないだろうが、念のため忠告しておく。もしも出所後に怪しい動きを見せたら、今度こそ首に刃が突き刺さることになる」
「しかも次は、楽しい楽しい拷問付きだ。さっきよりもっと酷い時間を味わいたいなら、また――」
「とんでぇもごじゃいまへんんっ!! しませんっ!! まもりまふぅわ!!」
「げんひゅっ――げんしゅ、させて、いただきますっ! もう、わるだくみは、いたしません……! せいしっ、せいいっ、償わせていただきますので……! 連行を、お願い致します……!!」
レリアとヤニク。2人はふらつきながら立ち上がり、あり得ないほどの低姿勢で自ら馬車に乗り込みます。そうして別人のような――弱弱しく力ない目付きとなった2人は、やがて治安局へとたどり着きました。
そして、その後――
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