ゲームの世界で最難関クエストを達成したら異世界にいた

@katasa

第1話 最難関クエスト達成そして・・・

 完全フルダイブ型のゲームが開発されてから、半世紀が経った。


 この半世紀の間、数多のゲームが発売されたが、今から2年前、今までの完全フルダイブ型のゲームとは次元の違う完成度を誇るゲームが発売された。

 

そのゲームの名前は「The Another World」。


 別世界と名付けられたそのゲームは、ファンタジー世界を舞台としたゲームで、圧倒的な人気を誇っていた。


 ***


 俺は、自室にある完全フルダイブ型ゲーム専用の椅子に座り、「The Another World」を起動させた。


「The Another World起動」


 そう呟くと同時に意識が、仮想世界の中に入っていく。


 意識が仮想世界の中に入っていく感覚を感じる。


 数秒後、目を開けると、中世ヨーロッパ風の景観が色がっていた。見える景色、感じる雰囲気、現実の世界と何ら遜色がない。このゲームが発売された当初からプレイしている俺には見慣れた光景だ。


 人気のあるゲームだけあって、街中はプレイヤーで賑わっている。大通りをしばらく歩くと、巨大な転移ゲートが見えてきた。俺はまっすぐゲートに向かい、そのままゲートに入った。


 ゲートを通り抜けて、今回の目的地である朽ち果てた遺跡に転移した。そこから、遺跡を進み、遺跡の最下層にある部屋まで移動していく。


 すでに一度訪れている場所のため比較的早く最下層までたどり着くことができた。


 遺跡の最下層にあたる空間の中心には、古びた両開きの扉が置かれている。この扉は転移ゲートになっていて、今回の目的地に続く唯一の道だ。ストレージから別クエストで入手した鍵を取り出し、古びた扉を解錠する。


 一呼吸置いた後、扉を開き中に入った。


 古びた扉を潜りぬけると、そこは空島だった。


 ここが今回の目的地で、「The Another World」の最難関クエスト「The All」の舞台である天空ダンジョンだ。いくつもの難関クエストをクリアして、ようやくこの場所に到達することができる。


 天空ダンジョンは、ダンジョンと名前がついているだけで、普通のダンジョンのような階層は存在しない。ダンジョンには、一匹の竜が住んでいるだけだ。


 空島の綺麗な景色を楽しみつつ進んでいくと、巨大な洞窟の入り口が見えてきた


 俺は、迷いなく洞窟の中に入っていく。洞窟には、所々に水晶があり、その水晶が光を発している。そのため、明るさは十分にあった。神秘的な光景の洞窟を進んでいくと、巨大な空間に出る。その奥には、体長十メートルはあるだろう、黄金の竜が鎮座していた。天空ダンジョンのボスである、黄金竜『The All』だ。


 解析を発動させて、黄金竜のステータスを確認した。


 名前『The All』

 種族『竜』

 クラス『神獣』


 俺に気づいた黄金竜『The All』は体を起こし、翼を広げ、戦闘態勢に入り、開戦の狼煙となる咆哮を上げた。


 咆哮は衝撃波となって俺に襲いかかってくる。


「一式・柳」


 技を発動させ、衝撃を受け流す。


 衝撃波は、洞窟全体を揺らし、一部の壁が崩れ落ちた。


「ただの咆哮でこの威力か・・・」


 俺はストレージから、刀を取り出す。自分自身で作り上げた、最高傑作の武器「月蝕」だ。


 油断なく構え、次の攻撃を待つ。


 黄金竜の竜気が高まるのを感じる。黄金竜の体の周りを黄金のオーラが覆う。そして、黄金竜は、再び咆哮を上げる。


 先程のものとは違い、竜気を帯びた咆哮だ。威力は先ほどとは、比べものにならないほど高いことが予想できた。


「一式・桜流し」


 黄金竜と俺、両者の技がぶつかり、凄まじい衝撃が発生する。


「無属性魔術・結界」


 結界を瞬時にはり、身を守る。


 一方、黄金竜は凄まじい衝撃の嵐を結界も張らずに耐えていた。


「さすが最高難易度のボス」


 一人呟きながら次の手を考える。


 そう思うのも束の間、完全に戦闘モードに入った黄金竜が次のモーションに入っていた。


 次の瞬間、黄金竜のブレスが閃光のように走った。


「やばい」


 防御が間に合わない!それなら。


 月蝕に魔力を流し込む。流し込んだ魔力を斬撃として放つ。


「ハッ!」


 互いの攻撃が再びぶつかり、極大の攻撃の余波が発生する。しばらくして、攻撃の余波が収まると、洞窟の天井が吹き飛び、外から光が差し込んでいた。


 黄金竜は翼を動かし飛翔する。それを見て俺はスキルを発動させる。


「スキル・空中歩行」


 空を駆け、黄金竜に続く。さらに付与魔術を発動させ身体能力を強化した。


「付与魔術・金剛力」「付与魔術・加速」


 まだだ。もう一段階ギアを上げる。


「闘気法・纏」


 そこからは、超常的な戦いが始まった。


 黄金竜は爪、牙、尻尾を用いた接近戦を仕掛けてくることもあれば、ブレスや、魔術といった攻撃もしてくる。そのどれもが地形を変えるほどの攻撃だ。


 俺も黄金竜の攻撃を受け流しながら、攻撃をする。


 空島は戦闘により荒れ果てていた。


 どれほどの時が経っただろうか。


 ついに決着がつく。


「二式・雷切」


 雷を纏った神速の斬撃が黄金竜を襲う。雷切によってできた隙を俺は逃さず、追撃を仕掛ける。


「これで終わりだ」


「仙法・月牙の太刀」


 まともに攻撃を受けた黄金竜は、空島に落ちていった。


『特殊クエスト「The All」を達成しました。達成者に報酬を与えます』


 戦闘終了を知らせるシステムアナウンスが聞こえる。続けて。


『達成者に報酬を与えます。スキル「竜の因子」を獲得しました。スキル「竜の因子」を獲得したことにより、「竜気」に覚醒しました。スキル「竜気法」を獲得しました。特殊報酬として、称号「黄金竜の加護」を獲得しました』


 アナウンスが流れると同時に、黄金竜の体が、光の粒子となった。


 光の粒子が俺の方に向かって飛んでくると、そのまま俺の体に吸収されていった。


 今まで感じたことがないほどの力を感じる。


「これが黄金竜の力か」


 クリア報酬をもらったため、帰路に着こうと考えていると、再びシステムアナウンスが入る。


『対象が全ての条件を達成したのを確認しました。これより転移を開始します』


 次の瞬間、俺を中心に巨大な、魔術陣が発生した。


「なんだっ?」


 今までこんなことは起きたことがない。


 俺は、慌てて転移陣から抜け出そうとするが、間に合わず転移陣に飲み込まれてしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る