第7話 釣り行かない?

「今度の休みさ、釣りに行かないか」


角のとがったデビルの少女が言った。


「魚屋で買えばよくない?」


耳のとがったエルフの少女が言った。


港町の喫茶店に二人の姿はあった。


「ん? なんか話が飛躍してないか? 釣り行きたいって話なんだが」


「いや、わざわざそんな面倒なことしなくても、魚屋で買えるでしょ、魚ぐらい」


「お前はアホかぁ? アタシは魚がほしいのではなくて、釣りをしたいんだよ」


「分かってるわよ。見くびらないでちょうだい」


「ひねくれ者めが。話の腰を折るでないわ」


「腰を折ると言えば、この前ね……」


「うぉい! さらっと話題を変えようとするな! どんだけアタシの話に興味ないんだよ!」


「分かったわよ。続けてちょうだい」


「まったく……って、この前に何があったんだ?」


「あんたの方から食いついて来てどうすんのよ。魚か? お主は」


「うまい! 座布団一枚!」


「ありがとう。後で質に入れとくわね」


「売るな売るな。いやすまん、今のはアタシが悪かった」


「そうよ。この前押し入れを整理していた時に……」


「だからその話を進行さすな! 優先順位を守れや、アタシの話が先だ」


「我よ我よと、相変わらず傲慢な奴ね」


「そんなに傲慢だった覚えはないのだが。まあいい、簡潔に言おう。一緒に釣りを楽しまないかい?」


「冒頭と何も変わってないのだけど。まあ……いいけど」


「いいんかい! じゃあ最初からそう答えろや」


「私、押しに弱いのよね」


「知るか。お前なんぞは押し入れに入っとけ」


「うまい。座布団一枚」


「やかましいわ」


二人は喫茶店をあとにした。

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