10話.[なんでそんなに]
「夏休み、あっという間に終わってしまいましたね」
「なんで敬語? それにそんなの当たり前じゃない」
本当にあれからはずっと一緒にいてくれて楽しい夏休みだった。
芽衣子とも会えたわけだし、過去最高と言っても過言ではない。
でも、その分なんか変になってしまったというか、寂しくなってしまったのだ。
学校が始まればそちらにばかり意識を向けていられないから、というのもある。
私は彼女や溝蒋さんと違って切り替えが上手いような上手くないようなという感じなので、上手く両立! みたいなことは難しい。
「またあの秋葉とゆっくりできるだけの日々に戻りたいよー!」
「私は明衣子もいてほしいわ」
「そりゃそうだけどさ」
「だってあんた、すぐに抱きついてきたりするし」
「普通だよ普通、だって私達の関係はもう変わっているんだから」
仮に友達のままだとしても一緒にいたいと考える。
調整してなるべく一緒にいられるようにと行動する。
そういう気持ちがなくなってしまったら友達とは言えない気がする。
「そこは否定しないわ」
「おお」
「でも、だからこそ気をつけなければならないことというのはあるのよ」
場所を考える、頻度を考える、距離感をしっかりする、というところだろうか?
別にいつでもがばっ、ぎゅっ、っとしているわけではないから十分気をつけられているはずけど……。
「よし、まずはもう少し離れてみましょう」
「え、いまだってベンチひとつ分ぐらい離れているんだけど……」
それでも一緒にはいてくれているからと不満も漏らさずにいるわけで、もしそれすらもなくなったらどうなるのかは分からない。
暴走するのかもしれないし、また過去の私のような症状が再発するかもしれない。
あまりにもひとりの時間が増えればそういうものだからと片付けようとする悪い自分が出てきてしまう可能性は十分あった。
ただ、それを言うと優しさだけで変えようとしてしまうのが彼女だからできない。
それにご両親にはっきり言ってしまったのもあれは彼女にとっては邪魔なことだったとしか言えないし……。
「……なんでそんなに離れているのよ」
「えぇ、そもそも最初からこういう距離だったけど」
「別にそこまで離れる必要はないじゃない」
「そ、そう? それなら近づくけど」
難しいお年頃というだけなのかもしれなかった。
あとは同性同士ということで引っかかっている部分もあるのかもしれない。
「もっとでいいわよ」
「い、いや、もう隙間がないぐらいだよ?」
「もっとっ、別に暑いとかそういうのはないからっ」
「わ、分かったからっ」
結局、数秒後にはいつもの感じに戻ってしまった。
それも彼女から求めてきているわけだからなんか不思議な感じで。
でも、やっぱり人の体温というのは安心できるからいいかなあ。
それに好きじゃなかったらここまで近い場所にいるのは許さないだろうからね。
92作品目 Nora @rianora_
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