【3話 何かがおかしい】

 ハチオウジと呼ばれる地区の西には山がそびえたっていて、自然を感じられる光景があった。


 そして、ハチオウジの西地域にある住宅街に一軒いっけんの小さめの家がある。


 二階建ての家の二階には四平方メートルの部屋があり、そこに一人の女性が寝ていた。


 寝ている女性は百五十五センチメートル程の身長をしていて、十八歳前後に見える容姿。それから、白い生地に水玉模様が等間隔に何個も描かれているパジャマを着ていた。更に、あざやかな赤色の髪をしていて、前髪は眉下まで伸ばし、後ろ髪は首近くまで垂らしている。胸部に小さめな二つの盛り上がりがあり、目尻はやや下がっていた。


 一方、硝子がらす窓の外は騒々そうぞうしい音を響かせている。騒音は寝ている赤髪の女性の部屋も刺激していく。


 赤髪の女性はゆっくりとまぶたを開けた。


(うーん、うるさいなぁ)


 近くに置いてあった腕時計を取ってボタンを押していくと、正面の宙に数字の映像が映し出される。


(いま何時だぁ? ……え? 朝の四時三十分? あれ、早起きし過ぎた!?)


 眉をひそめながら窓の外を眺めて、目を見開いた。


(いやいや、すでに太陽が昇っちゃってるよ! 徹夜てつやの影響おそろべし)


 苦笑いを浮かべながら腕時計を左手首に巻いていく。


 続けて、部屋の扉に歩いていき、廊下に出る。


 扉には『ユキ』と太い文字で書かれた名札が掛けられていて、横に揺れていた。




 ユキは台所に向かって移動しながら大きく叫ぶ。


「アンジェ! リンゴジュース!」


 家の中にユキの可愛らしい声が響き渡る。


(あれ? 反応が無いな)


 小首をかしげながらもう一度叫ぶ。


「アンジェ! リンゴジュースが飲みたい、持ってきて!」


 しかし、静寂せいじゃくという返事がくるだけだった。 


(ん、お父さんもお母さんもアンジェ連れて遠出してないよね? って、いやいや、昨日まで一緒に過ごしてたのに、ないない! まさか、故障でもした? アンドロイドのさだめが訪れた!?)


 それから、眉尻を下げながら窓の外を見つめる。


(それにしても、今日はずっと外が賑やかだなぁ。お祭りなんか今の時期やってるわけないよね? ちょっと外の様子でも見てみようかな)


 ユキは首をかしげながら玄関に向かっていく。そして、足に靴を装備し終えたら扉をゆっくりと押していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る