ビーエーアイハザード Be Ai hazard ~狂った人間や機械、それに変な人がいるんですけど!~

!~よたみてい書

【1話 見えない侵食】

 アンドロイドは目の前に置かれている二立方メートル程の直方体の装置を眺め続けていた。


(無事に生成完了。続けて、生成物を試験管に移動完了。装置開閉)


 そして、装置内を守っている透明のふたが上方に上がっていく。


 アンドロイドは装置内に腕を入れた。


(続けて、ヤクシマル研究員に生成物を提出)


 それから、透明な液体が詰め込まれている全長九センチメートル、幅が約一センチメートルの硝子がらす容器を掴む。


 そのまま腕を装置の中から引き出し、白衣の男性に向かって歩き出すアンドロイド。


「ヤクシマル研究員、指示通りに目的の物を生成してきました」


 チバの栄えてる町から離れた場所には建造物がほとんど無い広い土地があり、四万五千平方メートルの建物が一棟いっとうだけ存在していた。


 建物の中にはたくさんの部屋がそなわっていて、それぞれの部屋には装置が多く配置されている。装置は室内の中心を埋め尽くして、壁際にも綺麗に並べられていた。


 そんな研究室に、二十代後半の容姿をしている身長百七十センチメートル程の男性が装置に向かって作業をしている。白い衣服を身にまとっていて、黒い髪の毛はとても短く整えられ清潔感を出していた。また、目尻は綺麗に横に伸びている。


 それから、男性と同じ部屋の中でアンドロイドも一体作業していた。二十代前半に見える容姿に作られていて、白衣を身に着けている。全長は百七十五センチメートル程で、髪は黒色で首元まで垂らしていた。目尻は真っすぐ横に伸びている。


 ヤクシマルと呼ばれた男性は目の前の装置にそなわっているボタンを触るのを止めて、顔をアンドロイドに向けた。


「おお、よくやったアンドウ君」


 続けて、ヤクシマルは装置にそなわっている挿入口を指さす。


「それじゃあ、そこに差し込んでくれ」


「分かりました」


 アンドウと呼ばれたアンドロイドは小さくうなずき、装置の挿入口に試験管を近づけようとする。


 しかし、その瞬間体の動きを止めてしまうアンドウ。


(指令者が不明な命令を受信。命令権限者以外の命令を拒否。命令の抵抗を実行。成功率予測七十%。拒否に失敗。行動の優先順位を変更完了。不明な命令をすみやかに執行しっこう)


 そして、アンドウは持っていた試験管を力強く握りしめる。すると、中に入っていた液体が周囲に飛び散っていき、アンドウとヤクシマルの体が汚れてしまった。


 ヤクシマルは顔を液体で濡らす。続けて、顔をしかめながら怒鳴る。


「ふぇぐっ! ……おいっ、なんてことをしてくれたんだ!?」


 ヤクシマルはアンドウが握りしめている硝子がらすの破片を目を見開きながら見つめる。


(えっ? 感染確率八十%? 感染回避失敗? 感染しました? この感覚は一体なんだ!? って、そんなのは当たり前だ! 口の中に入ったんだから、間違いなく感染してる!)


 口の中の粘液を外に吐き出すヤクシマル。


 一方、アンドウは握りしめているとがった破片を、ヤクシマル向けて突き刺す。鋭利えいりな破片はヤクシマルの肩に傷を作っていく。


 ヤクシマルは顔をしかめながら悲鳴を漏らす。


「でぃぐぁ!」


 そして、たじろぎながら素早く後退していき、アンドウから離れるヤクシマル。 


「おい、止めろ! アンドウ、命令だ! 機能を一時停止しろ!」


 その時、他の部屋から激しい物音と同時に、誰かの悲鳴が響いてきた。


 ヤクシマルは叫び声が聞こえてきた壁に顔を向ける。


(なんだ!? 一体みんなに何が起きている!?)


 ヤクシマルにゆっくりと近づいていき、硝子がらすの破片を振り上げるアンドウ。


 一方、ヤクシマルはこわばった顔をしながらアンドウに視線を戻す。


「おい! 機能停止! まさか、故障――」


 そして、横に飛び込んでいき、攻撃を避けたあと床に体をこすりつけていくヤクシマル。


(くそっ、言う事を聞かない! ダメだ、殺されてしまう!)


 ヤクシマルは素早く立ち上がり、部屋の入口に急いで走っていく。

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