HAPPY BIRTHDAY TO ME
白井 くらげ
第1話
今日はわたしの誕生日
母が言うには難産で夜11時頃に出てきたとか
「3,2,1--ハッピーバースデー私!」
誰もいない公園で一人缶ビールをカシュッとあけた
死ぬほど寒い、でも飲めばそのうち体温が上がることを知っているというかそれが
本当に体温としてなのかはわからないが
「30歳、みそじだよぉぉぉぉ」叫んだ
誰もいないからいいんじゃないかと思う現に公園にエコーしただけで暗闇に吸われた
ごっ、ごっとビールを流し込みぷはぁと息を吐くと死ぬほど美味しく感じた
右手にある白いビニール袋をがさがさとあさり、焼き鳥と揚げ物を出した
ビールをあおり、さらにかぶりつく。ただただ旨い
「さて、私はなんでこんな夜にこんなところにいるのか」
呟きむなしさが溢れたのでヒールでブランコに乗るとお尻が冷たい
子供の頃恐らくかなり楽しいと断言できた時
まさか誕生日に夜の公園にいるということを想像できたろうか
小学生のころなんかはプロフィール帳が流行り、結婚したい年齢は?の欄には
25歳と書いていた。全く小学生どもが・・・わたしだけど
学生時代は特に匹敵する特徴もなく大学で遊び彼氏ができて同棲していた
そこまで。よくある痴話げんかで別れた
合コンもした、出来た男に借金をされて行方不明になった
男運がないのかもしれない。友達と有名な占い師に聞いてみた
貴方は男運あるわよでも努力しないとね?会社と家の往復じゃダメよと笑みと共に終了した
大抵の人間は努力してるんじゃないかと思う
家に幾らか入れているのが馬鹿馬鹿しいと感じて一人暮らしした時期もあるが
更に生活費がかさみ、辞めた
部屋で飲むより帰るまでに1杯引っかけたほうが小言を言われずに済むので
よく夜には一人で飲む。それが誕生日だったというだけだ
「いや、ダメじゃん」
全てにおいて女としてどうなのか?
私は暗い公園を見渡した夜中にみる寂れたパンダやクマの顔は割とホラーで
ベンチに座り直した
「公園とか夜に来るものじゃない」
時たま車のライトで灯りがぼんやり薄れ
人の気配がない砂場に遊具から子供や腕が伸びていたらどうしようと想像し凝視したが
何も起こらない
ふと思った、もしソコからゾンビや吸血鬼が出てきたら私の人生は変わるのだろうか
30歳の侘しい誕生日が人類滅亡の瞬間に変わるのかもしれない
しばらく待つが遊具は暗い夜に染るだけで何の物音もしない
ゾンビも誰も現れず私1人で、むしろ普通に泥棒や不審者の方が怖い
さらに言うなら私が不審者として警察に声を掛けられる可能性が出てきた
「あ〜何なんだろう私は。働きたくな〜い
ヒールを引っ掛けた足をプラプラさせ
もう無くなる揚げ物をひとかけら、口に放る
サクサクと耳と歯に舌に食感を残して消える
ビールを飲み 考えも無くなりボーとする
……ん?
目の前に象がいた
数歩先、太い足にでっぷりした胴体大きな耳を広げ長い鼻は地面にまで垂れ下がる
しっぽは私より長く立ち上がった私が見上げると丁度お腹の下にいるおそらく踏み潰せるだろう
「ん、と夢なの?」自分の頬を抓ると痛い
慌ててスマホを翳し写真モードに切り替えると何故か象は映らずその先にある砂場が映る
「ええええ、どうして」
つぶやきこの衝撃を共感する仲間を探した、が見渡す限り誰もいない
指先で110番しかけたがもし他の人には見えないとどうしたらいいのかと疑問を呈した
数秒後、私は歩き出した
近づくほど大きい
1つ分かったことがあった
コレは象の像だ
ダジャレではなく大きな動物の象は動いていなかった
しかも表面はツルツルした石で触れると冷たい
長い鼻も大きな耳もつぶらな瞳も生きていないし、ゴワゴワした皮もない
垂れ下がるしっぽについしがみついてみる
冷たいがこの湾曲部分に足を引っ掛けられる
登れる?とその考えに何故かウキウキした
何とか掛けた足で自分を引き上げ大きな尻にしがみついて登る
体は真ん中が窪んでいてほふく前進でそこまで這い太ももで挟んで起き上がった
「おおお」めちゃくちゃいい眺めだ
冷たい風が吹き私の眺めは地上5メートルほども上から眺めれた
「すごーい」子供みたいな感想がでた
そして何故か音もなく象があるいた
「うぉ………!」大きな足をあげて1歩を踏み出しゆったり動く
音はない
公園の景色が少しずつ変わりとても楽しくなった
「お、あ、どこいくの」だんだん不安になる頃引き返し元いたベンチに来た
「ありがとう」と口に出すと象は少しも動かなくなった
同じように降りると象の足跡があり
それを写真に撮ったすると既に象が消えていた
大きな足跡だけが私のスマホに残り
私は帰路を歩いた
来た時よりは楽しい時間を過ごした
HAPPY BIRTHDAY TO ME 白井 くらげ @shikome
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