第2話 どこで、どう間違えたのだろう……
笑顔の仮面で隠せば大丈夫だ。そう意気込んできたはずなのに、私はどこでどう間違えてしまったのだろう……。いやたぶんここにいる他の者たちとて、何がどうなっているのか分かっていないはずだ。
キーキーとまるで動物園にでも来たような甲高い声が、王宮の会場内にこだまする。その中心に子爵令嬢である私、アルフィーナ・モドリスと公爵家の長男でこの国の騎士団長でもあるエリオット・グランツがいた。
彼は今ホールの壁際まで追い詰めた私に片膝をつき、手の甲に口づけをしている。
「えっと、グランツ様、今なんと……? 私、何かを聞き間違えてしまったようなのですが」
私は全く状況が呑み込めず、聞き返した。
「どうか、わたしのことはエリオットとお呼び下さい、アルフィーナ嬢」
熱を帯びた目で、私を見上げる。確か、思い違いで泣ければ彼とはほぼ初対面だったはず。それなのにいきなり下の名前で、しかも呼び捨てにしろというのはどういうことだろうか。
「ああ、アルフィーナ嬢、いくらでも言わせてくれ。どうか、わたしと結婚して欲しい」
私の笑みが引きつる。本当にこれはどういう状況なのだろう。
私が知っているこの国の騎士団の団長といえばいつも眉間にシワを寄せ、部下を怒鳴っているような人だったはず。それなのに青い瞳をキラキラさせて、満面の笑みを浮かべている。私はちくちくと痛むこめかみを押さえ、ここに至る前のことを思い出していた。
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