死んだはずの幼馴染みがある日突然目の前に現れ、世界が少しずつおかしくなっていく。そんなお話
深谷花びら大回転
不思議な夢
夢を見た。四方には真っ白な壁、天井も床も目が眩むほど白い。
白い箱庭、とでも言うべきか。夢ならではの不思議な空間。
その箱庭の四隅の一角に俺は佇んでいた。どこを見渡しても白、シロ、しろ、闇など一切感じられない純白に覆われたこの空間。
ここが天国と言われても腑に落ちてしまいそうなこの場所で、俺と同じく異分子が存在している。
正方形に構築されたこの空間の中央に一脚の椅子が置かれ、そこに姿勢正しく座している女性だ。
気高く尊く神秘的な女性は神なのではと錯覚してしまうくらいに神々しかった。俺が立つこの場は神との謁見の場なのではと、そう思ってしまう。
けれどそれは幻想。女性が、彼女が人外的存在などではないことを、他の誰よりも俺が一番承知している。
ふと、彼女と視線が絡む。たったそれだけ、なのに喉に詰まる異物感は増すばかり、後ろめたさが増すばかり。
そんな俺に彼女は小さく口を動かし何かを語りかける。しかし声は聞こえない、彼女が発声したのかも定かではない。
ただ、語り終えたであろうと察した直後、彼女はそっと口の端を上げた。その優しく寂しく諦念したような微笑みに視界がぼやける。
現実に舞い戻るよう意識が覚醒したせいか、それとも夢での涙か、恐らくそのどちらもだろう。
波打つ視界に彼女の存在が朧になる。
――次こそは必ず。
声に出したつもりだ。けど音となって彼女の鼓膜に響いたかはわからない。でも、それでいい……これは今までの俺への戒めでもあり、これからの自分の決意でもある言葉だ。
静かに目を閉じる。目の端から零れ落ちた雫が頬を伝う……その感触がやけにリアルだった。
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