第64話 再起動
今日は郷間達を連れての、Cランクダンジョン攻略である。
昨日クレイスと一緒に入った場所だ。
「ピピルプパパルプ。ブルーアースパワー!」
入った瞬間、謎の呪文と共に自信満々に変身しだす神木沙也加。
その変身シーンは、アニメなんかと似たり寄ったりな感じだった。
全身が謎に青く光り、体にいくつもの青いバラが咲く。
そしてその薔薇が弾け、肉体を包み込んで魔法少女に彼女は姿を変える。
まあクレイスの時に見ていたので、特に驚きはない。
寧ろ本人がそのままの分、劣化版とも言えるだろう。
なにせ、クレイスの方は縮んで美少女化までするからな。
「マジカルサーヤ参上!」
神木沙也加改め、サーヤがドヤ顔でポーズを決める。
「おぉ~」
それを見てパチパチと拍手するクレイス。
困った様な姿で見つめる郷間兄妹。
見事な対比である。
「サーヤさぁん、実は私もぉ、魔法少女なんですよぉ」
「え!?あなたも魔法少女なの!?本当に!?」
クレイスの言葉にサーヤが食いつく。
「そうなんですよぉ~。よかったらぁ、コンビを組みませんかぁ?」
「ええ!組みましょう!!」
サーヤが目をキラキラさせ、クレイスの両手を握ってぶんぶんと手を振る。
仲間が出来た事が嬉しいのだろう。
だが現実は残酷だ。
この後の事を思うと、不憫で仕方無くなって来る。
「じゃぁ、変身しますねぇ」
クレイスが両手を広げるポーズを取って、此方を見て変身の合図――ウィンクをしてきた。
別に自己判断で変身してくれてもいいのだが、彼女は律義に許可を求めて来る。
俺は首を縦に頷いて、オーケーを出した。
「ぴぴるぷぱぱるぷぅ。いえろぉあーすぱわー!」
クレイスの体が黄色い光に包まれる。
ここまではサーヤと同じだ。
だが彼女とは違い、クレイスの変身はまずそのゴツイ体が縮む事から始まる。
「――っ!?!?!?!?!?」
それを見て、サーヤが目を見開き息を飲んだ。
そして黄色いバラが咲き、砕けて魔法少女装束へとクレイスの姿が変わる。
黄色をモチーフにした魔法少女へと。
「………………」
ショックで目を見開き、口を開いたまま呆然と立ち尽くすサーヤ。
ちょっとした面白顔芸だ。
「おお!クレイスちゃん可愛い!マジ可愛い!!」
郷間はサーヤの様子に気付いていないのか、変身したクレイスの姿を大絶賛する。
少しは空気読めよ。
「兄さん、ちょっと……」
「ん?あっ……いや、まああれだよな……ははは」
凛音に注意されてやっと気づいた様だ。
だが空気の読めない奴はもう一人いた。
「サーヤ。同じ魔法少女同士ぃ、正義の為に頑張りましょぅ」
「……」
だがサーヤは話しかけられても一切反応しない。
まるでクレイスの言葉など聞こえていない様な……
「ふむ……」
俺は彼女の顔の前に手をやり、ひらひらと動かしてみる。
だが一切の反応が無い。
覗き込むと、白目をむいている事が分った。
「立ったまま気絶してるな」
「えぇ……」
余程ショックだったのだろう。
とは言え、いくら何でも気絶は豆腐メンタルすぎだと思うんだが。
俺は取り敢えず、気付け代わりに彼女の頭部にチョップする。
斜め45度で。
「ほげぁっ!?」
変な声を上げながらサーヤが勢いよく尻もちを搗き、頭を押さえた。
故障の再起動はやはりこれに限るな。
まあちょっと力を籠め過ぎたみたいなので、さりげなくアクアスに頼んで回復して貰っておく。
≪お任せください。マイロード≫
「うぅぅ……なんで……なんで彼女だけ」
「サーヤ。お前の目指す魔法少女ってのは、他人との差を
放っておくとグダグダ引きづりそうなので、メンタル面にも再起動をかけておく。
ちょっと熱血っぽく言っとけば、きっと余裕だろう。
「それは……」
「真の魔法少女ってのは……世の中のありとあらゆる理不尽に屈せず、戦い続けるのがあるべき姿だろう!それをお前はなんだ!情けない!」
「――っ!?マスターのおっしゃる通りです!他人と違うからってショックを受けたり、それを妬んだりしそうになったり……私が間違ってました!」
「そうだ!お前はお前の魔法少女を目指せ!」
勝手に。
という言葉は省いておく。
「クレイスちゃん!同じ魔法少女として宜しくね!」
「よろしくですぅ」
めでたしめでたし。
ほんと、チョロい奴で助かる。
「さて、じゃあ攻略を開始しようか」
今回は、レベル4に上がった郷間兄妹とサーヤの3人でCランクダンジョンを攻略できるか確認する意味合いが強い。
だから俺は保険的な付き添いでしかないし、クレイスにも出しゃばりすぎない様指示してある。
これで上手く回る様なら、Cランクダンジョンまではこの3人に任せられる様になるだろう。
まあ郷間と凛音の能力は大体わかっているので、サーヤに期待って所だな。
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