第41話 最強厨

ダンジョン攻略を始めてから既に4日経っている。

鉄針は要注意人物という事で、ダンジョン攻略から外されていた。

まあそれは仕方のない事だろう。


警察に引き渡されたので、今頃は事情聴取を受けているはず。


で、俺達の方はと言うと――


「攻撃を集中させなさい!」


現在は本隊と合流し、中ボスと思わしき巨大なゴーレムと絶賛戦闘中だった。


ゴーレムは体長20メートルを超す巨体の魔物で、いわゆるゲートキーパー的な存在だ。

次のエリアへと駒を進めるには、こいつを倒す必要がある。


「そこ!油断しないの!」


指揮をとっているのは衛宮玲奈だ。

そしてメインで戦っているのは、レベル6以下の面子である。

レベル7組は、そのサポートに努めていた。


何故そんな真似をしているのか?


理由は簡単。

低レベル組のレベルを上げる為だ。

例のEX経験値って奴を稼がせる。


中ボスはAランクのボスよりもずっと強いので、レベル6以上に上がるいいチャンスになるからな。


別にレベル上げは、柳兄弟が抜けた穴埋めをする為ではない。

これは最初っから決まっていた事だ。

どうやら海外勢の参加を進めるために、姫宮グループが出した追加条件らしい。


「暇だ」


思わずぼやいてしまう。

危なくなった時だけ味方の手助けなど、退屈極まりない作業だ。

手が滑ったとか言って、ゴーレムの首を跳ね飛ばせたらどれ程素晴らしい事か。


「まあだが、もうちょいか……」


何だかんだ言って、こっちは大人数だ。

レベル的に大ダメージを狙えないとはいえ、手数が多い。

確実にダメージが蓄積されていっている。


特に活躍しているのが、唯一のレベル6であるグエンなわけだが……


「ん?」


グエンの動きが急に変わる。

彼の叩きつけた衝撃波が、ゴーレムの外皮を大きく砕いた。

どうやらレベルが上がった様だ。


グエンは水を得た魚の様に、ゴーレムの体を破壊しまくる。


いい感じだ。

はよ終わらせてくれ。


「クラウヨ!ハオウリュウコショウゲキハ!!」


グエンの両手から膨大な衝撃波のエネルギーが放たれ、ゴーレムを直撃する。


「ぐーーーーーーー」


それが決め手となって、ゴーレムの巨大な体が崩れ落ちた。

これでやっとお守りから解放される。


「フ……ツカワザルエナカッタヨ」


当のグエンは腕を組んでドヤ顔だ。

因みにさっきの覇王竜虎衝撃波は、とあるアニメキャラの必殺技だ。

そして奴の出身である、ベトナムは重婚が禁じられている。


まあここまで言えば分かるだろう。

奴はアニメオタクだった。

そのため、6人の嫁と言うのは全て2次元の話である。


「エギール!ボクノショウゲキハ、ミテテクレタ!?」


「テメー!姐さんに気安く話しかけてんじゃねぇ!」


「ニクダルマサン。ジャマデース」


更に付け加えるならば、彼は最強厨でもあった。


最強厨とは、兎に角強いキャラに熱い思い入れを持つ者の事を言う。


見た目?

性格?

ソンナノカンケイアリマセーン!


的な奴だ。

奴の6人の嫁も分かりやすく、全員アニメ最強クラスの無双女キャラで固まっている。

そしてグエンには、柳を瞬殺した俺がそいつらと同列に見えたらしい。


で、プロポーズという流れだ。


此方がフルフェイスの全身黒鎧でも一切気にしなかったのも、最強厨だったが故である。


「あんた、変なのにばっか好かれるわね」


「お前も大差ないだろう?」


アイドルオタに好かれるより、まだあの二人の方が何万倍かはましだろう。

変な光る棒を振りながら寄って来られたら、俺なら殴らずに済ます自信がない。

そう言う意味では、玲奈の忍耐力には感心するばかりだ。


「くっ……痛い所を突いて来るわね。私だって仕事じゃなけりゃ、アイドルなんかやってないわよ」


衛宮姉妹は、姫宮グループの広告塔としてアイドルをやっている。

ご苦労な事だ。

郷間が俺にそんな無茶を求めてきたら、きっと問答無用で張り倒すだろう。


「さて……あんたら、いつまでも男同士で睨み合ってんじゃないわよ!ドロップ回収も終わってんだから、出発よ!出発!」


俺達は中ボスを倒した事で生成されたクリスタルを使い、次のエリアへと向かう。

2年前のSランクダンジョンはエリアが2つだったそうなので、恐らくここもそうだと思われる。


さて、Sランクダンジョンってのはどんなボスがいるのやら。

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