<赤いきつね>と<緑のたぬき> “the Scarlet Fox” vs “the Emerald Raccoon”

マナシロカナタ✨2巻発売✨子犬を助けた~

第1話

 俺は世にはびこる悪を討ち正義を執行する組織【トーヨー・スイサン】の若きエースにして、聖剣エクスカリバーの担い手だ。

 コードネームを<赤いきつねスカーレット・フォックス>という。


 聖剣エクスカリバーの担い手は代々、この偉大なるコードネームを受け継ぐ決まりになっていた。


 そして俺は今。

 かつての師であり、今は悪の秘密結社【イヴィルナーク】の指導者にして仇敵であるダークコードネーム<緑のたぬきエメラルド・ラクーン>を追い詰める事に成功していた。



「師匠! かつて正義の体現者とまで言われたあなたが! 俺に正義の何たるかを教えてくれたあなたが! なぜ悪の秘密結社の指導者なぞになり果てたんだ!」


「この世界はどうしようもなく邪悪にまみれている。目の前の悪をただ倒すだけでは、悪のはびこる世界は変わらない。世界そのものを変えるには、悪すらひれ伏し恭順する<究極の悪>が必要なのだ」


「悪はどこまでいっても悪であり、それ以上の何物でもありはしない! どんな理由があっても悪は悪だと、そう俺に教えてくれたのはあなただったはずだ!」


「お前にもいずれ分かる時が来る。そして自分の積み上げてきた正義の惨めさと、この世界の虚しい真実に絶望するのだ」


「たとえ悪そのものをなくすことはできなくても、それでも俺は俺の正義を貫きます。目の前で苦しんでいる人を救い続けます。それが<赤いきつねスカーレット・フォックス>のコードネームを継いだ俺の使命だ!」


「青いな。私もかつてはお前のように純粋に正義が勝つと信じていた。目の前の悪を討つことで、いつか全ての悪が滅びるのだとね。お前は本当に私の若いころに瓜二つだよ」


「俺はあなたとは違う! 最後まで俺の正義を貫いてみせる! 師匠……いやダークコードネーム<緑のたぬきエメラルド・ラクーン>! 今この瞬間から俺はあなたを師と呼びはしない! 今のあなたはただの悪! 悪の秘密結社【イヴィルナーク】の指導者<緑のたぬきエメラルド・ラクーン>だ!」


「ならば見せてみるがいい、お前の正義とやらを。貫いてみせるがいい、お前の正義を!」


「望むところだ! 今ここで正義の正しさを証明するとともに、あなたに討たれた仲間の仇をとらせてもらう! 抜刀! エクスカリバー!」


 俺の力ある言葉とともに、力を封印する聖なる鞘から抜き放たれたエクスカリバーが、その雄々しい姿を現した。


「エクスカリバー……<赤いきつねスカーレット・フォックス>の名を持つことを許された戦士だけが手にする伝説の聖剣。まったく何度見ても美しいな。しんの底から惚れ惚れさせられる」


 聖剣エクスカリバーを見た<緑のたぬきエメラルド・ラクーン>は、どこかうっとりとしたように呟いた。


「見とれてないでさっさと剣を抜け<緑のたぬきエメラルド・ラクーン>。俺は丸腰の相手を斬るつもりはない」


「騎士道か……そんなものも教えたな。だが一つだけお前に教えていないことがあったか」


「俺に教えていないことだと?」


「<緑のたぬきエメラルド・ラクーン>……先代<赤いきつねスカーレット・フォックス>であるこの私の倒しかたさ」


 その言葉と共に<緑のたぬきエメラルド・ラクーン>の身体から、猛烈なる闘気がオーラとなって立ち昇りはじめた――!


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