ゾンビ病棟24時

ちびまるフォイ

ゾンビとして幸せな状態

「今日はどうされたんですか?」


「なんだか……気分が悪いんです。先生、みてもらえますか?」


「わかりました。……むむ、これは……!」


「どんな病気なんですか。はっきり言ってください。

 今、世界で猛威をふるってるゾンビアルツハイマーですか!?」



「……病気なのかわかりませんね」



「えっ? そんなことあるんですか」



「……私たちゾンビでしょう?」


「先生、どうしたんですか急に。当たり前でしょう。

 もうこの世界はすべてゾンビになっちゃったんですから」


「ゾンビって不思議なもので、肉体は死んでいるはずなのに生きているんですよ」


「さっきからなんなんですか。

 ゾンビアルツハイマー病になっているならそう言ってください!」



「だから! 病気が多すぎて、なんの病気なのかわからないんです!」



「えええ……」


「ゾンビだから、もう色々な病気をわずらっているんですよ。

 でもどの病気があなたの気分が悪いのを引き起こしているかわからないんですっ」


「ここは病院でしょう? 過去のデータとかでわからないんですか」


「わかりませんよ。全部、人間でとったデータなんだから。

 ゾンビの体のデータなんてひとつもないんです」


「じゃあ、心当たりのありそうなものをかたっぱしから試してくださいよ」


「あのね、薬はいわば毒なんですよ。

 たくさん試した結果、副作用でかえって悪い病気になる危険性だってあるんです」


「じゃあ、私はずっとこのままですか!?」



「あ、そうだ。こうしましょう」



「先生、その注射は? 私への薬の治療薬ですか?」


「いえ、人間に戻す薬です」


「はい!? 治療薬じゃないんですか?」



「ゾンビから一度人間に戻れば、どういった病気かわかります。

 ここには人間状態での治験データがやまほどありますからね。

 あなたの気分の悪い原因もたちどころにわかりますよ」


「も……もちろん、その後ゾンビに戻れるんですよね……?」


「え? どうして?」



「いやだーー! 人間に戻ったらまたゾンビに追われるんでしょう!?

 それに麻酔ナシで首に噛まれるあの痛みを味わうなんて!!」


「ゾンビのままじゃ病気の原因もわからないんですよ!!」


「人間を経由せずに治す方法を探すのが医者でしょう!?」


「そんな無茶な!?」


「無茶でもなんでもやってください!」




「……わかりました。最後の手段です。手術をしましょう」



「それで治るんですね!?」


「あなたがもう病気に悩むことはなくなりますよ」


「お願いします! 早く手術してください!」


「ではここへ横になってください。ゾンビだから麻酔いらないですね」


「これでやっと治るんですね……!」


 ・

 ・

 ・



「手術おわりましたよ。気分はどうですか」


「……」


「それにあなたの病気もわかりましたよ」


「あ゛ーー……う゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛……」



「あなたの病気はゾンビアルツハイマーで間違いありません。

 知能がいちじるしく低下しているでしょう?」


「う゛ぁ゛ぁ゛ーー……ぁぁぁ……」




「お大事にどうぞ。これでもう病気に悩まされることは二度とないでしょうね」

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