私だけの戦争
バブみ道日丿宮組
お題:自分の中の戦争 制限時間:15分
私だけの戦争
たった一人が世界の運命を握るのだとしたら、どうだろうか?
それも誰も知らない場所で行われる戦争。
「これで決まりです」
今日も戦いは続いてる。
永遠にも続く私だけの世界。
「反則じゃない?」
「いえ、ルールに従ってます。このページを読んでください」
そういってルールブックを目の前の男に差し出す。
男は犬歯が突き出るほど伸びており、おでこには2本の角がある。背中には白い翼が生えてる。いわゆる獣人だった。
「ほんとだ」
うんうんと男は頷く。
「なら、僕の負けだね。いやー、楽しい。実に楽しいよ。君との交流は永遠としたい」
「そろそろ勘弁してくれませんか」
もう2年にもなる。
こうして私が時間の止まった世界に訪れるようになって。
「君以外の人が戦って負けたら、破滅だよ?」
それでもいいのかという視線を浴びる。
よくない。知らない間に世界が滅びるなんて、誰も嫌だろう。
しかも私なら勝てるというのに、避けるのはまた違った話だろう。
「僕としては滅ぼしてもいいって思うんだけどね。君みたいな逸材がいなくなるのはもったいない気がしてね!」
あははと笑顔。
笑っていうセリフじゃない。
「これまでずっと君に勝ててないは不思議でしかない。まぁ負けたらこの世界滅ぼしちゃうんだけどね」
「たまたまですよ」
ゲームを理解する能力が他人より高かった。読み解く能力があった。落ち着いて考えることができた。そういった当たり前のことがここで役に立ってるだけだ。
普通の世界に、それらは役に立たない。
集中力はあるかもしれないが、それはそれのためのものであって、こういった特別な世界での戦争に役立つことはない。
場馴れ。
そういったものに近いかもしれない。
「最近歯磨き粉を変えたんだけど、どうかな?」
「ミントですか。私の世界にもありますよ」
「そう! こないだ薬局でもらってきたんだ」
「ちゃんとお金は払わなきゃダメですよ」
世間話。
世界の命運をかけた戦争(ゲーム)のあとは、こうして破壊者である彼と雑談をしてる。
そこに種族の違いはない。
滅ぼすもの、滅ぼされるもの。そういった違いはあるかもしれないが、空気は一緒。吸うもの、食べるもの、触れるもの。
同じものをこの男は感じ取ってる。
壊した世界を忘れないようにということらしいが、惜しむならば壊さなければいいのに。
なーんてことを考えてると、
「そろそろ時間だね。また一週間後に会いましょう」
世界が閉じるーー真っ白に。
私だけの戦争 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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