8
どうしてそう思ったのか、あの子に会いに行こうと、ここに来た。この雪の中、今夜も母ちゃんを待っているのだろうか。
「待っていたんだよ、いつ来てくれるかと」
「ごめんよ、もっと早く来ればよかったね」
あの空き家に行こう、と誘うと少女は
寒さのせいか、それとも何か別の理由があるのか、少女はひどく弱っているように見えた。足元のおぼつかない様子に、たまらず、
軽い・・・この年頃の少女はこんなに軽いのか?
そのままあの空き家に連れていき、
何でオイラは外套を着てこなかったんだろう。この薄っぺらい毛布より、親方が買ってくれた外套は上手に少女を暖めてくれただろうに。後悔したが今さらのことだ。
なにか燃やせないかと部屋を見渡す。床はレンガだ、何かを燃やしても火事にならないよう火の周りに燃えるものを置かなければ何とかなる。そうだ、火の周りを雪で囲もう。
立ち上がろうとすると少女が
どうする? 少女はかなり弱っている。服があの時より大きく見えるのは作り直したからじゃない。あの時あった『
ろくに食べさせて
「大丈夫、たき火をするだけだよ」
どこにも行かない、とは言えなかった。たき火をしたら安全を確認して、すぐ親方を呼びに行こう。親方ならこの子を助けてくれるはずだ。
幸いガタガタのクローゼットは簡単に
「たき火がついたよ、これで少しは暖かくなる」
話しかけると少女は
「何か食べられるものを持ってくるから少しだけ一人でいられるかい? 食べたいものを言ってごらん。手に入れば持ってくる」
「行かないで」
少女は繰り返した。
「すぐに戻るからね、そう言って母ちゃんはもう三日も帰ってこない」
その間、何を食べていたんだい、家の中には入れないのかい?
「母ちゃん、家の鍵は閉めて行ったんだ。ここで待ってろ、って。だからアタシずっとあの場所にいたの」
その間、雪しか食べてない。
―― 売られたオイラはまだマシだった。生きていく
いや、待て。捨てたんじゃなくて何かの事情で帰ってこられなくなっただけかもしれないじゃないか。少女の母ちゃんも今頃少女を心配して泣いているかもしれないじゃないか。
「母ちゃんが帰ってくるまで元気でいなきゃだめだよ。きっと母ちゃんはちゃんと食べてるか心配しているはずだ」
少女の気持ちを明るくするよう、できる限り元気な声でオイラは言った。
「だから今は何か食べなきゃ。オイラは本当にすぐに戻ってくる。この先の通りを真っ直ぐ南に行った広場の一角にオイラの家があるんだ。そこまで走って行って食べ物を持って帰ってくる。本当にすぐだよ。ほらほら、何が食べたい? 遠慮せずに言ってごらん」
少女の答えに分かった、とだけ答えた。無理だ、などと本当のことは言えない ――
少女は「母ちゃんのスープが欲しい」と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます