祭りの後

アメリアさんの父親の乱入という一幕もあったけれどコンビニは平穏に営業を続け、記念すべき最初の営業日を終えたのだった……

僕たちは箱の家で異世界コンビニが無事に開店できたことを祝うためにささやかなパーティを始めていた。

「ソフィアさん、今日はありがとね」アメリアさんは改めてソフィアさんに感謝を伝えている。

「いえいえ。しかし変わりませんね彼も……」ソフィアさんが苦笑しながら言った。

「大声、こわかったですわ……」「あー……、ごめんねイザベラさん!」

スーさんは呆然としていたが我に返るとイザベラさんをあやしているアメリアさんに尋ねた。

「アメリアさんって……女王様だったの!?」「う~ん、まぁ~、元、ね」

アメリアさんは困った顔で答える。スーさんは申し訳なさそうに頭を掻く。

「え~、あたし、そんな凄い人とバイトしてたの~?どうしよ~~」

「スーちゃん、あんまりそういうの気にしないでね。今はスーさんと一緒に働く仲間だからさ!」

「は、はい!」スーさんはちょっと固くなって答えている。「そんな固くならないでよスーちゃん……」


「……ソフィアさん、要するにソフィアさんが女王だったアメリアさんを退位させてソフィアさんが擁した今の陛下を即位させたってことなんじゃないのかこれ」

ててさんはソフィアさんに尋ねている。

「概ねそんな感じなんじゃないですか?ソフィアさん」山川さんがいたずらっぽく笑う。

「そんな単純な話では全くありませんが、歴史の教科書に一行で書くとしたらそういう内容になるのかもしれませんね」ソフィアさんは少し不満げな表情で答える。

「アメリアさんの後見人になったのは罪悪感からなのか?」

「そういうものも無いわけではありませんが、彼女にはもっと広い世界を知ってもらいたかったというのが一番ですね」

「あの様子をみたらアメリアさんの父親は権力基盤を全部ソフィアさんに壊されて恨み骨髄のように見えるんだが」

「それについては私にも責任がありますが……政変というものはそういうものですし、アメリアさんくらい切り替えてもらいたいところもありますね」

「物心がついていなかったアメリアさんはともかく自分の人生をかけて築き上げてきたものを全部ぶっ壊されたらああなるのも仕方ないと思うんだけどなあ」

ててさんは苦々しい顔をしている。

「それは、否定できませんけど……」ソフィアさんは困り果てたというように首を横に振る。

「まあソフィアさんはうまくやったんですよ。禍根を最小限に抑えて権力を手に入れたってわけですねぇ」山川さんが嫌なフォローを入れる。

「あなた、あの時に何が起こっていたのか知ってて言ってるでしょう」ソフィアさんは山川さんを睨む。


詳しいことはわからないけれど…ソフィアさんがアメリアさんの父親から権力を奪ったのは本当なのだろう。

でも、僕がここにいるのもソフィアさんがそれくらいの権力を持っているおかげだ。

僕の幸福は少なくともアメリアさんの父親の幸福を踏みつけることで成立していて、僕はソフィアさんがやったことを否定できる立場には無い。

きっと僕の知らない事情もたくさんあったのだろうし……僕はそう思って何も言わずに黙っていた。

そんな僕の気持ちを見透かしたようにソフィアさんが僕に話しかけてくる。

「これはクリスさんはまったく関係無い話からね。変に気負っちゃいけませんよ。」

ソフィアさんは笑顔で言う。

「僕はそんな……ただ、アメリアさんのお父さんをなんとかしてあげなきゃなあって」

「こういうのは権力だけじゃなくて自分自身の尊厳まで奪われたように感じてしまうものだろうしなあ」ててさんがぼやく。

「あはは、難しい話ですねえ」ソフィアさんは困ったような笑みを浮かべていた……

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