ガラスの底の遺書

さゑな

彼と私

「私がこの手紙を書いているのは

他でも無いあなたの為です。

私はあなたの為に、あなたは私のために

もうこの世にいないあなたの為に。

私もそちらに行きます。

さようなら。そしてこんにちは。

愛よ、永遠に。」


 私は、命を絶つ前に今までのことを

思い出した。

 産まれた時のこと、初めて親に名前を呼ばれたこと、入学した時のこと。これが走馬灯。身体が冷たくなるのと同時に、一番色濃く、あの時のことを思い出した。それは、三ヶ月前から始まったことだった。

 季節は秋、寒くなる一方で、みんな学校に

登校し始め、私は特に憂鬱な気分で登校を強いられた。

 授業の始まりと共に、清くうるさいあなたは、私の前に現れた。

黒く爽やかな髪は周りの子にはお世辞でも似合わず、あなたの背格好はお世辞にも、周りより劣っていた。

 わたしはこの男を知っていた。すごく昔に、少しだけ話をしてくれた。私からしたらどうでも良い一人だったが、その時は、違った。

 何か懐かしい気分になったのだ。

 私は、自分で自分のことをおかしいとは思わない。けど、確信した。わたしはおかしいのだと。何故なら、ただ数度だけ話しただけで気にすることもなかった彼に、意識をしてしまったからだ。

 授業のあと、彼は私の元へ来てはいきなり、

「お時間ありませんか?」などと口説いて来た。私は次の授業がなかったが為に、仕方なく、時間を彼に差し上げることにした。そして、私たちは二人だけになれる場所を探し、落ち着いた。

 彼は最初、ぎこちなく、硬い敬語で話し始めた。私はそれに応え、段々と慣れていった頃に、彼は熱い言葉を投げかけ、最終的には

「付き合いませんか?」と迫って来た。

 私は迷ったが、お断りした。彼はしつこかったが身を乗り出すことなく、表情も段々と悲しそうになっていった。しかし、最後には笑顔になり、今日は別れた。

 これが私と彼の関係の始まりだった。

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